小説 鷹の口づけ


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R18作品集」
リレー小説

衣擦れの音と白い布の秘蜜

2016.07.17  *Edit 

リレー小説第2弾です。
H28.4.28~ 紅理様主催茶会にて。
タイトルは紅理様と銀鷹の合作です。
エロ長めなのでお気をつけ下さい。

○リレー順(リンク先はPixivユーザーページです)
1:銀鷹
2:紅理様
3:フシギ様
のリレー形式
テーマ:日本国永住。黒さまに触られただけで敏感になるため、情事を断ったら野獣に夜這いされる。






 白い肌を撫でると甘い嬌声が上がり、先走りの液がたらたらと流れ始めた。緩く掴みながら胸を刺激する。ファイの嬌声は更に甘く、大きくなった。
「はぁっ・・・はぁっ・・・ああんっ・・・」
 一つになった身体を律動する。ファイは激しく喘ぎ、黒鋼にしがみついた。
「・・・はぁっ・・・・はぁっ・・・あぁぁっ・・・」
 やがて脱力したファイの身体を清めてやると、黒鋼は自らも眠りについた。



◇◇◇◇◇



 このところ、ファイには悩みがあった。
 正直、体力が保ちそうにないのだ。
 黒鋼の愛撫は優しくて、時には激しくて、満ちては引いていく波のようにファイを翻弄する。だからこそ、昂みを迎えて気を失うわけだが、なんだか最近自分がおかしいような気がする。
 ほんの少し、例えば湯飲みを渡そうとして指が触れあっただけで黒鋼が欲しくなる。肌を撫でられれば、それだけで先走りが出てくる。躯を重ね始めた頃は、これほどまでに敏感だっただろうか。
「黒様の腕が上がった、んじゃないと思うし・・・」
 ファイは掃除の手を止め、ぽつりと呟いた。黒鋼は元々上手いし、それが原因じゃないとファイ自身分かっている。いつだったかの情事をおもいだし、ファイはうずくまる。黒鋼に自分の現状を知られるのかとても怖い。よし、とファイは決める。黒鋼との情事を全部断るしか方法はない。ファイは決意新たにしたのだった。



◇◇◇◇◇



 白鷺城の鍛練場。今日は忍軍が鍛練をしていた。その中で一人機嫌の悪い者がおり怖がって誰も近づかない。
 また、ファイさんと喧嘩したのか、とひそひそすれば、ぎろっと黒髪の男は睨む。男の名は黒鋼といった。
 あの様子では、また彼の異人を怒らせる何かがあったのだと、噂声と話は絶えない。そういうのは専ら女が好むものだが、忍軍のお喋り共は好奇心に負けて推測をぶつけ合う。
 浮気じゃないか。
 まさか、あの鬼がか?
 愛想が尽きたのなら、隙ありじゃないか?
 止めておけって。鬼に喰われるぞ、お前。
 逆に、あの狐が浮気でもしてるんじゃないか。
 嗚呼、それはあり得る。
 あの容姿だ。その手の数奇者<すきもの>なら判らんぞ。
 などなど、根も葉もない噂どころか好奇心が先んじ、よく判らない方向性にもいくことがある。
 いい加減、その奇怪な目線に鬱陶しくなってきた黒鋼は、精神統一にならないことに溜息を吐き、木刀を手に立ち上がる。
「おい! 打ち込みの鍛練してぇそこのヤツら、来い!」
 ざわめきが広がる忍軍に、苛立ちを募らせた黒鋼は更に怒鳴った。
「おい、そっちの端からいくぞ!!」
 黒鋼はたまたま近くに居た不運な隊員に木刀で斬りかかる。そしてあっという間に全員叩きのめすと、少々息を整えながら再び怒鳴った。
「お前ら、俺が居なくなってから鍛錬サボってたんじゃねぇだろうな? 白鷺城100周まわってこい!」
「ぇぇぇ・・・」
 文句さえ声にならないほど息を切らせた隊員はよろよろと立ち上がると走り出した。全員走り出したのを確認して、黒鋼も走り出す。しかし、その途中で黒鋼は方角を改め、一人自宅に向かって走りだした。



 ファイは帯を解くと着物を脱いだ。最近急に敏感になってしまった肌は、ちょっと擦られただけで欲を呼び起こす。身体中どこもかしこもだから、たまらない。
 衣擦れさえ、身体の中から熱がわき起こるのだ。ファイは用意したさらしを身体に巻き終えると呟いた。
「ふう、これでずれないよね・・・」
 そして着物に手を掛けた時、玄関の扉が開く音がした。
「おい、帰ったぞ!」
「えっ、黒たん?お、お帰りじゃなくって、ちょっとまって!」
 慌てて着物に袖を通したが、帯を巻く暇などない。悩ましい格好のまま黒鋼の眼前に晒されることになったファイは、当然のように黒鋼に押し倒された。
「ちょ、待って黒様!ストップ!ストップ!」
「うるせぇ、黙れ」
 しかし布団の上に下ろされた瞬間、ファイの平手が黒鋼を打ち抜いた。
 パーン!!
「やだって言ってるじゃん、黒様のバカ!もうしない、絶対にしない!」
 涙目ではあるが、ファイが黒鋼を睨んで言い放つ。腕力では黒鋼が勝つが、この場で無理やり致すとなれば魔術師は徹底的にさけまくるだろう。渾名なんて呼ばずに東京のように名前よびにするのかもしれない。旅路を思いだし、黒鋼は内心冷や汗をかいた。
 渾名よびでないことがあの頃、辛かったのだ。
 はぁ?と言いかけた黒鋼だが、黙る。なにも言わないのをよしとしたファイが言い放った。
「絶対シないからね!!!!!」
 そんな日から、ファイは黒鋼との情事は断るか、会うこと自体を避けるかするようになったのだった。同じ屋根の下で暮らしているのだから、逢わないようにすることなど無理だろう。しかしファイはそれをやってしまえるのだ。
 個人部屋は一応のため互いにあり、寝起きはまず自室でするようになる。朝餉は魔術で空間を保っているのか、食卓に着けば解除される仕組みで、変わらずあたたかなまま食すことが出来る。本人はひとり先に城へ出仕してしまって、家にはいない。
 昼は任務で留守なので、お握りが包まれた弁当が朝の食卓に用意されている。夕餉は朝と同じ原理だ。夜とて、黒鋼の任務が魔物討伐も含まれるため、遠征になることもしばしば。
 そんなこんなで、まったく顔を合わすことなく、ひと月が過ぎた。



◇◇◇◇



 ―――もう、黒さまの貌を見なくなってから、どれくらい経ったんだろう…。
 仕事の合間の小休憩に、女官に淹れてもらった茶をひと口含み、ぼんやり空と流れる雲を見るもなしに眺める。湯呑みの淵を無意識に指でなぞり、どうしようかなぁと溜め息が漏れる。
 黒鋼と情交をしないと宣言した翌日、天機なのか偶然なのか、早番を請け負っていた女官が、臨月に入るとかで、急募で人員を欲していると聞いた。早番なので、時間は朝日が昇る前から八つ刻まで。その条件にファイは飛びついた。
 城の人事としても、早番という時間帯が厳しい条件に、ファイの挙手は嬉しいものだった。ファイが空ける仕事の穴は何とか周りで埋めつつも、彼の出仕時刻が朝と夜の時間が入れ替わる程度で、昼夜逆転よりは大分マシだ。
 そうして、完全なる黒鋼除けの時間帯が即日出来上がった。
 ―――こんな偶然……、いや、偶然じゃないね、これも、必然…なのかな。
 必然であるなら自分はどうしたらいいだろう。
 ―――黒様、怒ってるんだろうなぁ・・・。ううん、呆れてるかも。
 そう思うと既にルーティンとなった生活リズムを崩すのもちょっと怖い。黒鋼に会うと言うことは、きっとあの日の続きをすると言うことだ。欲情のまま押し倒した黒鋼の紅い瞳を思い出す。
「っ、はぁっ・・・」
 精悍で凛々しい顔、意志の強い瞳、自信に溢れた口元。
 自分とは違う、男らしく力強いのにしなやかな肢体。
 ファイは、黒鋼を思い出しただけでどう言う訳か、息が徐々に荒くなっていった。
「ファイ様?どうされましたか?」
 仕事を再開すべく声を掛けようと近くにやって来た女官に驚かれるほど、ファイの息は乱れていた。
「大丈夫ですか?今日はもうお帰りになられた方がよろしいのでは・・・」
 狼狽える女官に、ファイは力なく微笑む。
「だい・・じょーぶ・・・ちょっと遅れるけど、行くから」
 なおも心配する女官を何とか説き伏せ仕事に行かせると、ファイは自らを抱き締め、深呼吸を繰り返した。
 あぁ、黒鋼に会いたい。
 ファイは強く願った。腕に力が入る。着物が擦れ、ファイの身体は更に熱くなってきた。
「黒様・・・」
 いや、黒鋼に会いたいのではない。
 黒鋼に触れたい。抱き締めて欲しい。
 そして、自分の全てを奪って欲しい。
 ファイの思考がそこに辿り着いた時、ファイは黒鋼を探して白鷺城を彷徨い始めた。
 ―――どこにいるのかな……。
 逢いたい、と思い立ったのはいいがファイは小首を傾げた。鍛錬場だろうか。それとも。遠征だったら逢うのは不可能だ。帰還している場合は別にして。
 さてどうしようか、と思案し、とりあえず行くあてはなかったが、足の向くままにファイは歩む。曲がり角があり、どちらに行こうかとファイが迷っていたら、後方に人の気配がした。振り返ると、黒鋼がファイを見つめていた。
「黒さま……!」
 駆け出した脚に澱みも迷いもなく、一直線に愛しいひとへ。
「―――ファイさま!」
「……っ?!」
 はっと瞳を開けると、茶を淹れてくれた女官が、今度は菓子を配り歩いていたのか、数がわずかに減った菓子器を持っている。
「大丈夫ですか? もし体調が優れないようでしたら、帰ってお休みになられたほうが…」
「………いま…のは…」
「夢でも見られたのですか?」
 夢―――。そうか、夢だったのか。でなければ、黒鋼を求めて城内を漫ろ歩くなど、正気の沙汰ではない。
「もうすぐ、忍軍も帰って参ります。鬼も、帰還しますよ」
 よかったですね。女官は微笑んでファイの傍らを去る。体調が悪そうだと判断し、気を遣ってくれたようだ。ファイはお言葉に甘えて帰ることにした。歩く度に衣擦れが起こり、さらに身体が熱くなってゆく。
「はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」
 息も絶え絶えになりながら帰宅すると、ファイは布団に肢体を投げ出した。



◇◇◇◇◇



 魔物の討伐から帰った黒鋼は、知世姫に報告を済ませると家路についた。
「どうやらファイさんは体調が悪いようですわ。喧嘩中などと言わず、看病して差し上げて下さいな」
 知世姫の台詞に、ファイが心配でたまらず、自然と足が速まった。
「おい。いんのか?」
「・・・」
 黒鋼は眉根を寄せた。最近ファイが張っている結界と思われる空間がなくなっているような気がして、辺りに神経を集中する。奥の方に人の気配を感じ取り、黒鋼は奥の部屋へと足を向けた。
 どうやら気配はファイの部屋からする。具合が悪いという話だし、きっと部屋で休んでいるのだろう。ちゃんと水分や栄養を取っているのだろうか。更に心配になった黒鋼は、ファイの部屋にそっと忍び込んだ。
「…っ、ん…っ」
 くぐもった声が聞こえてくる。ファイの部屋は薄暗い。熱があるのか、うなされているのか、と黒鋼は心配になった。喧嘩したからといって放っておくべきではなかったのだ。内心、己に黒鋼は舌打ちする。
 なにかしら都合をつけて逢おうと思えば会えたはずだ。
 暗さに目が慣れてくる。声は、まだやまない。それどころか、どんどん艶を帯びてきた。しかも渾名まで聞こえてくる。黒鋼は切なげな声を漏れさせる、布団の塊の前で足を止める。佇む己と啼くファイを隔てるのは掛け布団一枚だ。これほど近くにいても気付いていないほどに、気が散っているということか。布団へ手を伸ばし、ぺろりと中の様子を窺う。
「おい………っ!?」
 中を覗いた瞬間に、布団を素早く元に戻した。暗がりだが、夜目が効いてしまう分、微かに見えた。何やら、見てはいけないものを―――。
 暗がりに浮かんだ、白くなめらかな肌。汗からすらも誘いの香りが立ち込め、部屋に充満していたそれとは比べものにならないほどに濃厚な。
「く、…ろさま……?」
「! お、おう…。具合、悪いんじゃねぇのか…」
「悪い、よ…。黒さまがね…居ない…から…」
 不満そうにファイが言う。ねぇとファイは黒鋼に言った。囁き声ほどの小さな声ではあったが、艶を含んだ声だ。
「黒様がここにきたってことは、これは夜這いって言うんでしょ…?」
 ファイのセリフに黒鋼の目が丸くなる。確かに今は夜ではあるのだが。
「気持ちいいことしてくれるの…?」
 ファイは黒鋼に聞いた。
「うっ・・・」
 言葉に詰まり、黒鋼は奥歯を噛み締めた。改めて問われ、なぜか否定できずにいるうちに、部屋に満ちる誘いの香が強くなった気がした。ファイは無意識なのかそうでないのか、すっと黒鋼に手を伸ばす。手と手が触れたその瞬間、黒鋼は布団を乱暴に剥がすとファイにのし掛かった。
「あ……ッ」
 心なしかファイが嬉しそうな声を漏らす。剥いだ掛布から顕わになったのは、脱ぎかけの着物が腕に絡まり、何故か胸元に巻かれた白い布。
 ―――サラシか? なんでンなもん……。
 灯かりすら射さない暗闇には、浮かぶ白磁の肌がサラシの色よりも白さを浮き立出している。それでももがいてなのか、我慢が効かずに艶めかしい脚が肌蹴ている。
「…くろさま…」
 とろりとした色香。甘い調べで呼ばう名。動きが戒められたように止まった頬へ、伸ばされた青白ささえ思わせる手指。
 来テ、早ク。 オ レ ノ ナ カ ヘ ―――。
 す、と細められた緋には、獰猛な獣すら跪いてしまうだろうほどの野性が灯り、ゆったりとした動きの中でも獲物を逃がさぬように、唇を食む。
「っんン…」
 すぐに唇と歯列は耐えていたものを解放するように迎え入れられ、朱い舌が桃の舌を探り当て絡み付く。溢れるほどに唾液を絡ませ合いながら、黒鋼の指が癖になっている胸の果実へと滑る。
「はあぁんっ・・・」
 さらしの上からでも尖っていると分かる尖端を、いつもより優しく撫でるとファイが啼いた。指の腹でくりくりと刺激してやる。ファイは早くも腰をくねらせ始めた。身体中を撫でる。乱れた着物とさらしが、黒鋼を欲望に忠実にさせてゆく。胸を撫でるうちにさらしの隙間から現れた突起に、黒鋼は吸い付いた。
「ひゃぁっんっ・・・はぁんっ・・・もぉっ・・・ああぁんっ・・・」
 もう一方の尖りも摘まむ。内腿を撫でる。黒鋼のたった一つの行為さえ、ファイの肌をいつもよりずっと赤く染め、そして肢体の中から生まれた熱はファイの思考を奪い、黒鋼を求めることしか考えられなくなっていった。
 反応がなかなか良く、執拗に乳首を攻めたてていれば、やだ、とか、だめ、と制止の言葉が黒鋼に聞こえてくる。だが、制止の言葉に反して、魔術師の瞳は潤み、体は黒鋼が触る度にびくっとふるえていた。
「な、んで、胸だけ…っ…んんっ」
 潤んだ瞳でファイが黒鋼に聞いてくる。ファイは両膝をこすりあわせた。もどかしい、と動作でうったえるが、黒鋼はあえて、ファイのものには触れない。
「そのうち、乳首だけでもイけるんじゃねぇか」
 黒鋼が言うと、ファイは瞬きをした後、頬を朱に染めて「だれの、せいで…っ」と睨んできた。睨んでもいまのファイの状態からは、全く怖さなどなかったが。
「睨むくれぇなら啼いてろ」
「ヤ、ん!」
 サラシの隙間から覗く胸の果実はぷっくりと膨らみ、唾液でぬめりがあるまま指で抓み上げれば、その感触だけでも紅く色付いていることが判るほど、芯が通っている。
「ヤ、やぁアッ! イジメ…ないでぇ…」
「フン。イジメてやったほうが悦ぶクセにか?」
「イジメ…る、からぁ…! こんなに…」
 ファイの指が黒鋼の手に添えられ、引き剥がそうとするように力を加えるが、その手を黒鋼は利用した。
「俺に弄られんのが嫌なら、お前が弄れよ」
「な、何で…?!」
「サラシ越しなら、自分の指でも感じるだろ? 触ってみろよ」
 導かれた指先には、少し湿り気を帯びた尖り。始めのうちは黒鋼の指と相まってじゃれ付くように動いていたが、快楽を得た身体は意志とかけ離れて動くようになる。
「ぅ、ン…ぁ…はッ」
「やりゃデキんじゃねぇか。そのまま、少し遊んでろ」
 ファイは突き放されたが指の動きは止まらない。ファイの指はいつしか二つの尖りを弄び始めていた。
「あんっ・・・あっ・・・くろ、たん・・・そこぉっ」
 ファイの啼き嬌声に、黒鋼がうずき出す。胸から腹にかけて縞を描くかのように巻かれたさらしの間から見える白い肌に口づけた。
「ふぁぁっ・・・く、ろ、さま・・・あぁんっ・・・」
 黒鋼の口づけはちゅ、ちゅとわざとらしく音を立てている。その度にファイの指先に力が入り、肢体を震わせ、自ら胸を摘まんだ指先が更に嬌声を上げさせた。黒鋼はひとしきり身体中に口づけると、ファイのさらしに手を掛けた。とっくに役目を果たさなくなっていたそれを、ファイから剥がしてやる。
「ああんっ・・・はぁっ・・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」
 さらしが肌を滑っただけでファイが嬌声を上げた。黒鋼は一瞬首を傾げたが、それに構わずさらしを外す。そしてさらしの幅を折ると、おもむろにファイの手を胸から外し、手首を拘束した。
「く、ろたん?」
 緩くとは言え縛られて、思いがけないことにファイは動揺していた。
 もっとして欲しい、でも、ちょっと怖い・・・。
 黒鋼はそんなファイの気持ちを知ってか知らずか、露わになったファイの身体を余すことなく撫でてゆく。黒鋼の手がファイの身体の中にともった熱を大きくしてゆく。その熱に、ファイはぴくんっぴくんっと肢体をしならせ、手首もさらしに擦られた。
「ああっんっ・・・はぁんっ・・・はぁんっ・・・もぉっ・・・」
 身体が熱い。手首も熱い。
 胸に、腹に口づけられているのに、同時に手首にも口づけられているような錯覚に、ファイは陥っていた。黒鋼の指がファイの胸の乳首の周りをゆるく円を描くように触れる動きに変わる。
「や、くろ…たん…っ」
 自分で触れないのがファイにはもどかしい。やだ、さわって、とファイが言っても黒鋼は肝心なところには触れてくれなかった。
「んんっ…っ」
 黒鋼の手の動きにファイの体は敏感に反応する。
「そこばっかり、や……っ」
「そこってどこだ」
 黒鋼の問いに、ファイがうろうろ視線を泳がせる。言うのは恥ずかしいらしい。魔術師の頬が赤く染まった。嗜虐心を煽られるのはこういう時だ。黒鋼は口角をあげた。
「ち、乳首さわっ…っ、ひぁ…!」
 意を決したファイのセリフと同時に黒鋼が、ファイの乳首に触れるとびくんと白い体が反応した。ファイの間にあるものから白い飛沫が飛ぶ。はぁはぁとファイが息をした。
「随分…淫乱な身体になったな…」
 ―――まさか、胸の刺激でイッちまうなんてな。
 腹の上をしとどに濡らす白濁を指で掬い、指を擦り合わせて弄ぶ様を見せつける。焦点の戻ってきたファイが、それを目撃するとサッと目線を逸らす。
「ン、そんな…遊ばないで…早く」
 一度達したことにより、熱が抜けたせいか正気が戻ると、途端に羞恥が押し寄せて来る。けれど渦巻く根源は腹の奥底で蠢き、久しぶりの餌を欲っし、まるで濡れているかのように奥が切なく感じる。それにすらもゾクゾクとした快楽を得るのだから、これが黒鋼の好みに開発された熟れの果てか。
「焦るな。イテェ思いするのはお前だぞ」
「痛くても…好いよ…。黒さまに傷付けられるなら、その傷だって、愛おしいよ―――」
「…俺は、大事なものは、極力傷つけたくはねぇ」
「黒さまは、自分が傷付いたみたいに…思えちゃうから…やさしいよね…」
 だったらなおさら、 オ レ を 救 け て 。
「っ!」
 するり、黒鋼の欲を如実に語るモノへファイの足先が触れる。悪戯に器用な爪先は、布地の上からだというのに、黒鋼がより育つようにと好い場所を撫でる。
「ねえ、黒さま。我慢比べはね、オレ…キライなんだよ?」
「堪え性がねぇからか」
 充分に体温に馴染んだ指と白濁を、脚が上がっているために、さらに肌蹴た着物の隙間から滑り込ませる。下穿きを失くした秘処へ触れ、潤みすらしそうな蕾が指をぬるりと迎え挿れる。
「ふ、ぅ…ッン、違…うよ、黒ぷっぷが、負けず嫌いなんだもん…」
 不満そうに否定するファイもまたそそられる。
「オレが頑張っても、あっんっ・・・結局・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」
「何言ってんだかわかんねぇぞ」
 黒鋼が蕾の中で指を曲げたのだ。
「だって、黒さまぁっ・・・ああっ・・・」
 黒鋼の長い指が、ファイの内壁を触れてゆく。指の動きに合わせてファイが啼き、黒鋼は益々嗜虐心に駆られた。
「ちゃんと言え」
 足先から伝わる熱さえ、ファイの中心に伝わってゆく。
「はぁっ・・・いつも・・・あんんっ・・・黒様が・・・勝つまでっ・・・っ・・・んんっするじゃんっ・・・」
「お前が弱いだけだろ」
 黒鋼は不本意だとばかりにそう切って捨てると、蕾の中を乱暴にかき混ぜた。
「あああっ・・・」
 ファイの足先から力が抜けてゆく。ぽとりと布団に落ちようとしたその足を黒鋼が掴む。そしてその膝を曲げると逃げられないように布団に縫い付けた。蕾と内壁への刺激は続いている。
「ああぁんっ・・・やぁんっ・・・くろ・・・ああっ・・・」
 黒鋼が奥へと指をすすめ、本数を徐々に増やす。その間、ファイは意味をなさない声で啼いているだけだ。ファイの汗が布団へと滴り落ちている。金の髪は紅潮した肌についていた。ファイの腹に残った白濁を指に掬い、三本目を入れると奥に進むとしこりに当たる。
「あ…っ!」
 顕著なほどに白い肢体がびくりとしなる。
「ここか」
「や、黒た…んっ」
 にやりと口角を黒鋼があげると、いやいやとファイが顔を横に振る。
「もう、いい…、から…っ。くろ、た…っ」
「……」
「指、や…っ…!んっ!」
 魔術師の言葉は聞かないふりをして、そのまま執拗にしこりに触れていると嬌声は更に高くなった。びくびくっと体が震えて、またファイのものから白濁が出る。
「………ッっ!」
 言葉にならない声が咽喉から絞り出されるように喘ぎ、先の絶頂よりも激しく消耗した体力に、身体は深く敷布へ沈み込む。蕾へ食まれたままの指は、きゅっきゅっ締め付けをしばらく繰り返したあと、弛緩したのを確認してから指を引き抜く。
「ふ…ァ……!」
 ぴくりと戦慄く肢体は、もう自ら動くことすら億劫なのか弛緩したまま投げ出されている。呼吸にすら甘さが混ざり、蕩けた表情のファイはぼんやりとしている。
「おい、まだトぶにゃ速ぇぞ」
「は、ぅ…ン、にゃ…くろひゃ、ま…?」
 力ない片脚を肩に担ぎ上げ、下肢の前を寛げる。外套や鎧装備は玄関口で脱ぐ習慣になっていたため、いつもなら着物が用意されているはずの籠にそれはなく、どうせファイとの二人暮らしなので気負うこともなく、上半身は裸のままだった。
「ァ、ぁア…っ、くろさまァ…」
 茫洋とした蒼は戒められたままの腕をこちらへ伸ばし、触れようとしてくる。それが健気でかわいく、脚を折り曲げながら身を屈めてやると、へにゃりと笑みを浮かべる。顔を唇が触れそうなほど近付けてやれば、自ら首へ腕を掛け、なおも引き寄せようとする。
「くろさま…」
 とろり蕩けた恍惚は、口吻けを強請ってくる。
「ぁ……、ッあっッ??!」
 しかし触れ合う寸前に、媚態によりそそり勃つ黒鋼を蕾へ宛がい、躊躇いなく腰を押し進めた。前触れのない挿入に、身を強張らせたファイは仰け反り様に雫と髪を散らし、なおも進めてくる黒鋼へ無意識の締め付けで出迎えている。
「ひぁっ…!」
 容赦なく奥をつかれ、ファイは激しすぎる責め苦からのがれようとした。しかし黒鋼の手が、ファイの腰を掴んでおり、逃げる術はない。きゅっとファイの中が収縮する。ファイの蒼い目からは、生理的な涙がぽろぽろとこぼれていた。零れる声は艶を含んでおり、黒鋼をさらに煽るものでしかない。
「んんっ…!」
 更によいところを攻めていると、びくっとファイの体が震える。耐えるようにして、ぎゅっとファイは目を瞑っていた。びくびくと白い肢体は痙攣したかと、黒鋼が思えばおさまった。はぁはぁと息をして、ファイが薄く目を開ける。
「…な、に?さっき、の…?」
 自分になにがおこったのか、と不安そうにファイは眉を下げた。ファイのものから白濁は出ていない。
 ……ということは。
「ドライオーガズムか…?」
 どこかの国で読んだ本を思い出し、黒鋼は呟いた。また始まった旅の訪れた国で、やけに詳しい本があり、その本でいろいろあったのだが、それはさておき。
「な、にそれ…?」
 聞き慣れぬ言葉が耳に届き、不安そうにファイが尋ねる。ファイは性的なことに関しては、昔にそういうものとして読んだだけで、興味は薄い方だ。悦楽が気持ちよいと、実際にファイに教えこんだのは黒鋼だ。
「育てがいがあるって話だ」
「??育てる??」
 ファイが疑問符を頭の上で浮かべる。体をすこし動かすのもだるい。黒鋼の楔が、ファイの体内から出て行く。今日はこのまま終わりかとファイが思っていたら、無理やり立たされ、壁を向いとけ、と黒鋼から言われた。壁にファイが顔を押しつける格好になる。
「え?なに?」
 さらしで戒めた両腕は、ファイの頭の上に、黒鋼の手により固定される。
「俺はまだイってねぇぞ」
 耳殻の裏へ口吻けられ、囁かれた低音に肌が粟立つ。壁へと追いやられて縋るように身体を支えるが、膝立ちでいるこの状態すら、腰が抜けていてガクガクと震えすら来している。いま黒鋼に吊られている手首の支えがなければ、ずるずると床にへたり込んでいる頃だ。
 黒鋼の片手が尻へ添えられ、親指で秘処をより割り開かれる。潤いが残るそこからくちゅりと水音が鳴るほどであり、再び宛がわれる剛逞へ期待に身体が切なく震える。
「……ッ」
「アぁっ…! ひ、ャぁッ…」
 息を呑む男の息遣い、今度はゆったりと埋められていく熱塊。熱を冷ます本能で壁へとより身を寄せるも、あまり効果は見込めない。
「く、くろ、さま…ぁッ、も…立って、られ…な、ヒぁっん!」
 いまにも崩れ落ちそうで、額を壁へ押し付けながら喘ぎと啼き声交じりに弱音を吐く。しかし男はそれを赦してはくれず、ちゃんと立てと命じられる。聞く必要がないと思って居ても、従順に躾けられたこの身と魂は、必死に崩れ落ちないように脚へと力を込める。しかし、そうすることで央へ進入している楔を締め付けてしまい、よく憶え込まされたその形をより鮮明に感じ取ってしまう。
「好いぞ、そのままだ―――」
「…ッアぁぁ!!」
 締め付ける最奥を無理矢理拓く強さで進まれ、いつもよりも強い刺激と衝撃に頭の中で光が散る。縋るものがないために、壁へ押し付けられた手はガリガリと引っ掻く。ひとつ長い息を吐き、身をわずかに起した黒鋼が、行くぞ、と合図を一方的に落として律動を開始する。敏感になり過ぎた身には、過ぎた快楽は苦痛にも似た感覚を伴って襲う。
「も、無理ッ! ダメ、オカシ、くっン! なぅうぅ、ひく……ア、やぅッ」
「泣いてんのか?」
 生理的と、限界を訴えた正気が混ざり合う泣き言に気付くも、動きは衰えず。ファイの膝が惰性で立っているのを確認し、腰を支えていた手をファイの頬へと触れると、がぶりと指に咬み付かれた。
 しかしそれも口寂しさから来る甘噛みだ。黒鋼はふっと笑うと律動を早めた。ファイの手がまた壁をひっかく。
「・・・っ・・・んんっ・・・はぁんっ・・・」
 壁をひっかく掌が熱を灯す。
 壁に擦られる身体が、熱を持つ。
 そしてファイの中心も、壁に擦られていた。ファイが更に激しく息を乱す。
「はぁぁっ・・・はぁんんっ・・・もぉっ・・・ダっあぁんっ・・・」
 最早嬌声は言葉の形にならない。まるで全身が性感帯のように、ファイに触れる全てが、ファイを昂みへと導きつつあった。
「おい、壁を汚すなよ」
 ファイの中心が壁に当たっているのに気付いた黒鋼が言う。
「そ、あぁんっ・・・む・・・ああぁっ・・・」
 黒鋼は顔に触れていた手を下ろすと、ファイの中心へと伸ばした。そっと中心を掴み、壁に当たらないよう上部を掴む。ちょろちょろと溢れ始めていた体液の出口を指で弄ぶと、ファイが更に高い嬌声で啼いた。
「あぁぁぁっ・・・も・・・だ・・・・あああぁんっ・・・はあぁっ・・・はぁぁっ・・・んんっ・・・あぁっ・・・あぁんっ・・・」
 ―――今日のファイは、異常だ。
 黒鋼は意識を持っていかれないように気をつけながらそんなことを考えていた。
 喘ぎ声は激しいし、きゅうきゅうと締め付ける後孔は、いつもに増して締まりが悦い。しかもその表情は恍惚で、それがまた黒鋼の腰遣いを早めさせる。
 黒鋼は、手首を押さえていた手を外し、ファイを抱きかかえるようにして胸に触れてみた。
「ひゃぁんっ・・・はあぁっ・・・はぁぁっ・・・」
 瞬時に嬌声が上がる。胸を摘まむ。ファイの尖端からはこれでもかと体液が溢れ出る。黒鋼はファイを扱いてやりながら腰遣いを深めていった。
 散々に黒鋼にイかされ、黒鋼が一度イったあともまた、体を嬲られた。ぐったりと意識を失ったファイは体を支えることが出来ず、崩れ落ちる。床に体がつくまえに、黒鋼はファイの体を受け止め、自身を引き抜く。引き抜く際、ファイの後孔からは白濁がこぼれていた。
 白い肢体の太ももを白濁が伝っていく様はどうにも劣情をかきたてられ、黒鋼は眉間に皺を寄せる。さすがに意識のない相手に、無理やり、事に及ぼうとは思わなかった。布団は汚れたので新しいのに変えないとだめだろう。
 ―――いや、先にこいつの体を清めてからか?
 風呂は湯を張っていたか、と黒鋼は思案する。だきかかえたまま、風呂場にいくと風呂はぬるま湯ではあったが湯ははってあった。とりあえず、ファイをお姫様だっこしたまま、己とファイの体を清めることにしたのだった。




◇◇◇◇◇




「………」
 静かに眠りから覚めたファイは、あたたかいひと肌に包まれていることに気付き、良く知り好く愛するひとだと無意識で認可した。触れ合う素肌が布地に心地好い。しかし、昨夜は彼を出迎えた憶えがないことを思い出した。ぼんやりとした思考で順序立てて思い出してみる。
 ―――えっと、体調良くないから早退させてもらって…。
 帰宅してすぐに自室へ向かった。身体の熱りは寝ていれば治まるだろうと布団を敷き、横になったところまでは記憶にある。
「そこから先…」
 憶 え て い な い 。
 そして、隣で健やかに眠る黒鋼は、いったいいつ帰ってきたのか。よくよく見れば、ここはファイの自室ではなく、黒鋼の自室だ。さらに身に憶え込まされた怠さが残り香の如く、昨夜何が起こったのかを語っている。
「ぇえー…?」
 何があったのか、正直訊きたいようで、聴きたくはない。うんうん唸っていれば、煩ぇと寝惚け声の男の腕に力が入る。
「ひゃ! く、黒っぴー! 当たってる!? ちょっと、起きてよ!」
「…煩ぇな…抱き枕は…黙ってろ……」
「抱き枕じゃないし!」
 尻に感じる硬さに、思わず身体がふるりと震える。奥へじわり広がる慾火がこれ以上広がらないように、一刻も早くその身を離したい。だが黒鋼は離す気がないのか、暢気に二度寝を決め込もうとする。
「っていうか、いま何時!? 黒さま仕事は?!」
「…休んだ。どうせお前も立てねぇんだから、休みの連絡はしたぞ」
 アレで。と指差された先には、連絡鳥として支給された梟だ。籠には収めず、止まり木があればそこへ居るよう躾けられているため、いまは同室の止まり木で目をぱちくりとさせている。
「えっとぉ・・・もしかして、白銀に全部見られちゃったのかなぁ?」
 血の気が引くような恥ずかしさに耐えながら何とか問いかけると、黒鋼がゆっくりと瞳を開けた。
「・・・なんだ、見せたかったのか?」
「ちっ!違うもんっ! 聞いただけだよっ」
 狼狽えるファイを面白そうに黒鋼は見て、それから残念そうに言った。
「あいつが見てたのは、寝顔だけだ。安心しろ」
 ほうっと大きくファイが息を吐いた。黒鋼の腕がファイをぎゅっと抱き締めた。耳元に口を寄せる。
「お望みどおり、もう一回してやろうか?」
「なっ・・・もっ、もう無理!無理だから!」
 ファイは慌てて拒否したが、黒鋼は更に尋ねた。
「夕べは異常に感じてたからな。あれだけ乱れれば、劣情も落ち着いただろう?」
「れつ? っ!!」
 真っ赤な顔で口をパクパクさせるファイに黒鋼はたたみ掛ける。
「今日はどうせ休みなんだ、落ち着いたところでもう一度愛してやる」
「えっ、遠慮、します!」
 ファイが叫ぶと黒鋼はファイの腰を撫でながら言った。
「ま、そうだな、今は止めとくか。ちょっと撫でたくらいじゃ、その気にならねぇみたいだしな」
「『今は』って何?黒たん?!」
「あぁん?そのままの意味だろ」
「今日は絶対しないからね!」
「言ってろ」
「もう! もーうっ、ぜぇえっっったい!! しないし! サラシでガードするも…ぅ、コホッゴホッ……!」
 逃れられない腕の中で、せめてもの抵抗に叫べば、掠れていた咽喉が痛みを伴い、咳き込むことになる。背を丸くしていれば、武骨な掌が背を撫ぜて宥めてくれる。咳が落ち着けば、用意してあったのか、水差しから湯呑に注いだ水を口移しの大サービスで飲ませてくれる。しかし、ある違和感に気付く。
「―――あれっ?! 服着てない!!?」
「気付くの遅すぎだろうが」
 腰や背に感じていた黒鋼の手は、てっきり着物の袷から侵入されたものだと思っていた。しかし肩にも感じる衣擦れと布団の隙間から入った外気、背に感じていた心地よすぎる体温に、ようやく身に纏うものが布団以外ないことを知った。黒鋼も着物を着ていないのかと思えば、しっかり下だけ穿いていた。
「ズルい! 黒ぴっぴだけー!」
「着せようとは思ったんだがな、冬でもねぇし。お前の肌、触り心地がいいからな」
 またするりと腕が腹へと廻り、寝惚け拍子で云われた抱き枕宜しく、逞しい身体にやさしくも強く強く抱き寄せられる。そして陶器のように白く、高質な絹のように手触りのいい肌を腹から胸へ掛けて撫で上げる。
「そういえば、お前なんでサラシなんて巻いてたんだ?」
「え…っとぉー、そ…それはー」
「腹じゃなく胸に巻いてんだから、腹が冷えたわけでもなさそうだしな」
 怪我を隠してかと思いもしたが、なめらかな雪原は多少の虫喰われなどで掻いた跡がある程度で、異常は見た限りではなかった。しかし広い掌が胸の粒を掠めると、ファイから鼻に抜ける啼き声が零れ、思わぬ反応にピタリ手を止めた。
「…なんだ?」
「なななんでも、ぁン! ッちょ、触らないで…!!」
 もう一度確かめるために黒鋼の指が、意思を以て胸の果実に触れると、抑えきれない喘ぎが唇から転がり落ち、慌てて黒鋼の手を掴んで胸から引き剥がそうとする。思いの外あっさりと武骨は離れ、ファイは胸を庇うように身を丸める。その顕著すぎる反応に、肘をついて上体をわずかに起き上がらせた黒鋼の表情は、ファイ以外が見れば人相が悪いと云われるだろう。
「…なるほどな…。胸がいい具合に育ったな」
「うぅぅぅうっ! く、黒わんこが…悪いんだから…っ」
「俺ばかりが責められんのは心外だな」
「黒わんわんが悪いんですー! 胸ばっかり、い…弄るからぁ!」
「だから、サラシ巻いてた…と」
 既に半泣き状態のファイは、過敏になり過ぎた胸の果実はツンと主張をしたままで、覆う掌にまで擦れるだけで、ゾクゾクとした愉悦が背筋を痺れさせた。痒みにも似た感触は、掌でぐりぐりと押し潰す動きをすることで一層強まり、さらに刺激がほしいと掌から指先へと自慰の対象を変える。
「……はッン…、……ふぅ…っ」
「おい、何勝手に盛ってんだ」
「あッッ!」
 自ら慾の悪戯となっていた手指を黒鋼に掴まれ、その場所から引き離される。するとわずかに熱が疼く、もどかしい感覚が胸に留まっているような気がする。
「ヤだ…離して…」
「………ここまで過敏になってんじゃ、衣擦れでも感じる、か…」
 慾火に潤む蒼玉は、昨夜の二の舞になりかけている。嘆息した黒鋼はどうしたものかと。このまままた胸への刺激を与えれば与えるだけ、底なし沼に水滴を落とすようなもので、解決には至らないし、さらに深みに嵌っていく。
「自分で…触っちゃダメなの…? 黒さまが、触ってくれるの…?」
「―――あぁ、そうだな…俺が…」
 あっさり色香に中てられた黒鋼が、ファイを仰向けに転がし、魅惑的に紅く色付いた果実が、淡雪色の肌には毒々しいほどに映える。
「ホーゥッ!!!」
「?!!」
 誘われるままにそこへ口吻けようと身を屈めるも、存在をすっかり忘れていた梟が、ひと声大きく鳴いた。思わぬ乱入に、ふたり共に正気の沙汰となり、慌てて身を離した。
「く、くく黒りんのえっちー!」
「はぁあ!? 勝手に盛ったのはテメェだろうが!」
「黒さまのせいだもん! 黒さまのせいだもん!」
 二人が仲良く言い争うのを、白銀は「寝られないよ」と言わんばかりの表情でみつめているのであった。


END




続きには小噺 名前決定戦を収録しています。
(PCからご覧の方は少しスクロールしてください)










「黒さま、飼ってる鷹に「銀鷹」ってつけてる?!」
「黒鋼のネーミングセンスは最悪ですわね、そのまんまですわ」
「俺の銀竜と真名から取ったんだ、悪いか!!」
「黒鋼は単純ですから幸せですね・・・」
 天照は遠い目をした。
「黒様のことだから、『銀の雷』とか、とぶのがはやい鷹だから『雷帝』とかつけるんだとおもってたー」
「それをつけたらつけたで、からかいがいがありますわね」
 怒りに全身を震わせる黒鋼。
「センスが良いかどうかは私の梟ではありませんから、宜しいんですのよ、黒鋼」
「お前等からかってんじゃねー!!!」
「え?『雷帝』とかつけなかったんですか?」
 日本国へデートをしに、来訪していたサクラにまでそこを突かれる。
「うん」
「そうなんてすか…。意外ですね…」
「おい」
 名前をどうするか悩んでいたら、黒鋼が提案したのが厨二センス抜群な名前で、梟から変な、名前つけられる!! と反抗される。
「小突くな!いい名前だろうが!」
 梟、ますます黒鋼に小突く。
「すごく嫌みたいなんだけど。黒さまの提案した名前」
「うーん・・・銀・・・うーん・・・」
「なんで銀にこだわってるの?」
「白銀だろう、コイツは」
「・・・!!」
 ぱぁっと梟の表情が明るくなった。
「あ、なんか嬉しそうだよ、この子」
「シロガネ、じゃぁ、まんまだろう?ハクギンじゃ呼びにくいしな・・・」
「白銀、って、黒様の弟みたいだもんねぇ」
 真剣に悩む黒鋼へ攻撃を止めた梟は、繰り返された候補にぴくりと反応する。
「梟くんは、どれがいいと思う?」
 黒鋼へ攻撃していた梟が、首を九十度傾げ、ファイへと羽ばたいてその肩に乗る。
「おい、なんでソイツに懐かれてんだ」
「これって、懐かれてるのかなー?」
「もしかして、いま云った名前が気に入ったんじゃないか?」
 デートなので、もちろん同行している小狼が意見を述べる。
「そうなのかな? ねえ、〝シロガネ〟が気に入ったの?」
「ホー!」
 梟はひと声高らかに鳴き、翼をバサリ広げる。そっかーと暢気な口調でファイは笑い、じゃあ今日からキミは白銀だねーと梟を撫でた。


終幕


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