小説 鷹の口づけ


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R18作品集」
リレー小説

ツギハギだらけのワンチャンス

2016.05.29  *Edit 

〜前書き〜

紅理様主催の茶会にて、4月9日からリレー小説に参加させて戴きました。
参加者と執筆順は次のとおりです。
1:紅理 様
2:銀鷹
3:フシギ 様
テーマ:日本国永住、痴話喧嘩し媚薬をファイが間違って飲む。
初めてのリレー小説への参加でしたが、とても楽しく書かせて頂きました。お二人ともありがとうございました。



なお、大変エロイ展開になっておりますのでご注意下さい。








 日本国。
 白鷺城の廊下で黒鋼にばたりと会ってしまい、喧嘩した手前ぷいっとファイは顔をそらしてしまった。
 喧嘩してまだ仲直りはしていない。一週間になる。
 そろそろ仲直りしなければ、とファイは思ってるがなかなかそうは行かない。ファイが顔をそむけると黒鋼は眉間にしわを寄せていた。変なところで意地をはっているからとは思うのだけど、難しい。すれ違う度に、ぷいと顔をそらす度に、胸がちくんと痛む。
「何かきっかけがあれば良いんだけどなぁ・・・」
 城下を歩いていると、不思議な一軒の店があった。どう言う訳か中に入らなければならない様な気がして、ファイは店の中へと一歩を踏み出した。
 一方、白鷺城では。
 嫁に無視をされている姿を度々目撃されている黒鋼は、好奇の眼差しに曝され、眉間の皺がまた一本増えていた。鬱陶しいそれらへ睨みを返せば、蜘蛛の子を散らすように散っていくクセにと嫌気がさす。喧嘩の原因など何だったのか、ここ一週間ずっと考えているのに、思い当たらない。訊いてもファイはますます臍を曲げるばかりだ。
 誰に相談することも出来ず、鬱とした気分が降り積もっていく。謝ればいいだけの話だ。そうは思っても行動は難しい。黒鋼は任務をしながら、眉間にしわを寄せていた。



◇◇◇◇



 店の中は暗い。
「あのー…」
 声をかけると奥から年老いた女性がでてきた。あら、と笑まれる。にこりとファイも会釈する。
「なにか困っておいでで?」
「え?」
 ファイの反応から確信したのか、奥からなにやら小箱をとりだし。ファイのそばの机にそれをおいた。蓋を年老いた女性はあける。中には小さな瓶が入っていた。
「それを使いなさると、解決するじゃろうて」
「えっと、」
 どうぞ、と瓶をおしつけられた。透明な液体だ。ファイは一度だけ首を傾げてから口を開いた。
「えっとー、オレお金忘れちゃったんですよねぇ」
 さすがに妖しげな小瓶である。なんとか断ろうと、ファイはふんわりと笑ってみた。
「どうぞ、持っていきなされ」
「でっ、でもっ」
 怯むファイに店主であろうその女性は、もう一度強く小瓶をファイに押しつけた。
「わ、わかりました・・・いただきます・・・」
 どうにも断り切れずに、小瓶を受け取ってしまったファイは店を出る。
「どうしようこれ…あとで高額金とか請求されないかなぁ…」
 まさかの悪徳商法だったらと恐怖が迫り、やはり返そうと店を振り返る。しかし、そこには確かに在ったはずの店が失くなっている。
「お店が、失くなってる…?!」
 これではまるで、〝彼〟の店のようだ。そこに在って、ない〝店〟。
 思わず握った手には、老婆から押し付けられたも同然の小瓶が在る。
 ならば、夢ではない。
 それとも黒鋼や知世姫が云う、妖に化かされたのだろうか。しかしそうは云っても、黒鋼と仲直りはしていない状態だ。よし、とファイは瓶を見つめる。
「使ってみようかな…」
 だって現に黒鋼と仲直りはできてない。どんな効能があるのか、と不安にはなったが決意したファイだった。



◇◇◇◇



 黒鋼は屋根の上で盛大な溜息を吐いた。
 今日の任務はさっきやっと終わった。こういう時に限ってミスをする奴がいる。そしてイライラしながら怒鳴りつければ、ケンカして機嫌が悪いからだと陰口を言われるのだ。
 見上げれば大きな月が白鷺城を照らしている。大きく美しい月と、ファイを重ねて、黒鋼はますますファイに会いたくなってきた。しかし、会うのなら、謝らなければならないだろう。
 黒鋼はファイに逢いに行くべきか、月を見上げながら考えていた。任務も終えて、不寝番以外はそれぞれ宿舎で休むなりの時間だ。ファイのこともあり、宿舎暮らしから家持になった手前、帰らないのもおかしな話である。だが、帰れば逢いたいが逢いたくはない家人が居る。喧嘩をしても食事を用意してくれるのは、良妻なのか意地なのか。
 ―――こんな処でぐだぐだと考えていても仕方ない。
 以前は気にしなかった、こんな為体を部下や周囲に見られ続けるのも、男の矜持がある。見栄を張るわけではないが、己だけの陰口がファイにまで及ぶのは、いい気はしない。
「………帰るか…」
 屋根から地面に着地し、家路を黒鋼は歩く。先に謝ればすむ話なのだが、日があき意気地になっているところも黒鋼は自覚している。目下の悩みの種だった。



◇◇◇◇◇



 二人分の食事を用意し、着物にしていたたすきがけの紐をファイは、するりと解いた。居間の机に置いた例の小瓶をちらりと見る。さてこれをどうするべきか。
(あのお店のひとが言ってたのは、オレがこれを飲むってことを言ってたんだよね…?)
 しばらく迷っていたが、恐る恐る瓶の蓋をとり、匂いをかぐと特にあまり匂いはしない。少し甘い匂いがするかなという程度だ。ファイは意を決してそれを自分の湯飲み茶碗に数滴垂らした。
 一瞬黒鋼にも、と思ったが、得体の知れない液体だ。黒鋼の明日の任務に差し支えたら困るし、自分だけにしておくことにする。そろそろ帰ってくるはずの黒鋼のために、二人分の茶を淹れた時、計ったかのように玄関が開く音がした。
 ―――か、帰ってきた!
 玄関の音に条件反射で動いてしまい、喧嘩中ということも忘れて出迎えてしまうところだった。
「帰ったぞ」
「あー、おかえり」
 気のない返事をし、黒鋼の気配もいくらか強張ったのを感じた。
 ―――や、やっちゃったよぉお!
 こんなはずじゃなかったのに、と気落ちする。微妙な空気のあとに沈黙。
 ―――いつもどうしてたんだっけ。
 とはファイは思ったが、そのまえに喧嘩中だったと認識する。
 ―――怪我してないかなー。
 ちらりと黒鋼を見ると、忍者装束から普段の着流しに着替えていた。怪我は今日はしていないらしい。ちらりと見るだけではっきりとは、ファイは確認してないが。
 ―――喧嘩中でも家に帰ってきてくれるのは、仲直りする機会まってるのかな。
 そのことに、ほっと安堵する。ちらり、ちらりと見ていたら視線が合い、また日中と同じように黒鋼からファイは視線をそらしてしまった。
 仲直りしたい。
 ぎゅってしてほしい。
 髪にさわってほしい。
 ―――黒、たん。
 心の中でファイが渾名を呼ぶと、少し体が熱くなった。思わず自分を抱き締める。
「ん?どうした?」
 黒鋼の声に顔を上げると、心配そうに自分を見つめる紅い瞳と出逢った。
「えっ、あっ・・・別に・・・」
「寒いのか?茶ぁ、入れたんだろ、飲め」
 黒鋼がいつものように自分の向かいに座り、茶を飲む。
「あ、うん・・・」
 ファイは黒鋼がいつも通りに戻ったようで安心した。
 ―――オレも、お茶飲もう。
 意を決して茶を飲む。
 なんだか甘い。そして、温かい。
 身体の中心から熱が発生しているような、そんな感覚。
「おい、どうした?」
 黒鋼が驚いた顔で自分を見ている。
「どう、って?」
 ファイは小首を傾げた。黒鋼は帰ってきてからというものの、ファイの様子がおかしいことに気付き、そっとファイを観察していた。おかしいと言っても、なんと言えば良いのか。
 初めは喧嘩してぎくしゃくしているだけだったはずが、いつの間にか所作が艶を増している。心なしか、目が潤んでいるようにも見える。
 ―――誘ってるわけじゃねぇよな・・・。
 黒鋼は目のやり場に困りながら、表面上は何とか繕って茶を飲んでいた。
 帰宅の時間を計ったように茶は用意されていた。食事の香りも土間方向から香ってくる。準備はしてある。またファイへ視線を戻すと、先よりも身体がゆらゆらと揺れている。具合でも悪いのかと思い、喧嘩をしている場合ではないと黒鋼は意を決した。
「おい、具合が悪いなら横になるか?」
「え……、ッ?」
「おいっ?!」
 瞳が虚ろになったファイが、黒鋼の呼びかけに顔を上げるも、バランスを崩してしまい、床に倒れ込む前に黒鋼が手を伸ばして受け止める。
 ―――熱い?!
 着物越しにでも体温の低めのファイが熱いということは、発熱しているらしい。こんな具合が悪くなるまで見抜けなかったことに、知らず舌打ちをする。
「く、黒様」
 白い手が黒鋼へと伸びる。空を思わせる目は潤み。ファイの頬は赤みがさしていた。熱がでたときはどうすべきだったか。黒鋼は必死で記憶をたぐりよせる。まずはとにかくファイを寝かせようと寝所に連れて行くことにした。お姫様のように抱き上げる。
 黒鋼に伸びたファイの腕は首に掴まるようにかかり、暴れることも無い。布団に寝かせ、手ぬぐいを濡らしに行こうとすると、ファイの手が着物を掴んでいた。
「離せ」
「やだ」
 黒鋼は小さく溜息を吐くと、無理矢理ファイの手を剥がそうとした。
「ねぇ、黒様」
「あん?」
「暑いから、脱いでいい?」
「はぁ?」
 困惑する黒鋼をよそにファイは帯を解く。袷からほんのり赤く色づいた肌が表れ、黒鋼はゴクリと唾を飲み込んだ。



◇◇◇◇◇



 ―――ダメだ、あのお茶を飲んでから、クラクラする…。
 心を落ち着かせるために飲んだはずなのにと、意識が酔ったときのように朦朧とする中で、湯飲みに関する記憶を辿っていく。
 黒鋼が帰宅するだろうと、ついいつもの癖で用意してしまった。中身は至って普通の緑茶。昨日も飲んだ同じ茶葉だ。
 ―――そういえば、ちょっとだけ…甘い香りがしたような…。
 甘い香りの原因は、なんだったか。そうだ、あの小瓶を数滴、入れたのだ。あの液体が何なのか、確かめもしないまま。
 それほどまでに、黒鋼と仲直りをしたかったのだろうか。
 勝手に動く身体は、熱いからと着物をすでに脱ぎ捨てて、ころりと敷布へ身を投げ出し、布の冷たさに息を吐く。
 ―――オレって、喧嘩するの…初めてかも…。
 ダカラ、仲直リモ、ハジメテ。
 そろりと黒鋼に視線を向けると、今度はばっちりと視線が合う。液体がなにかは判らない。これで仲直り出来るのかも判らない。でも。
「黒さ、ま。…ねぇ、シよう?」
 身体の熱をどうにかしたい。
「…具合悪いんじゃねぇのか」
 眉間に皺を寄せ、黒鋼が苦言する。何か耐えている表情だ。
「きっとこれ黒様にしか治せないから」
 だから、シたい。
 言葉に含ませて精一杯ファイは誘った。黒鋼の手が額に伸びる。熱の有無を確かめるように、額から頬へ、そして首筋へと掌が滑ってゆく。鎖骨を撫でる。下へと動く掌は、ファイの身体をゆっくりと撫で始めた。
「熱があるわけじゃ、ねぇのか・・・」
 呟くと、ファイが答えた。
「ん・・・だから、黒様にしか治せないって・・・」
「そうか」
 黒鋼は短くそう言うと、おもむろにファイに口づけ、言葉を奪う。
「んっ・・・はぁっ・・・」
 ファイが息を継ごうとするだけで、黒鋼は煽られていた。左手で脚を撫でる。右手で胸に触れる。小さな飾りはツンと立ち上がり、黒鋼はそっと摘まんでみた。
「ああぁっ・・・ああんっ・・・」
 肌を軽く撫でただけで、胸の果実は粒となり、感度が異様に高いように思うが、そんな違和感なんて後回しだと、欲望の波に攫われた。ファイから香り立つ何か。それに中てられたと云ってもいい。
「あっ…くろさ、ま…!」
 覆い被さってきた己に、ファイは自ら手を伸ばし首や肩へ絡める。
 いつもは体温の差があり、熱を分け与えて同じ温度にするのに、最初から互いが同じ温度だ。黒鋼の手が、ファイの身体の下におりていき、太ももを触る。
「く、ろさま」
 手の動きを黒鋼が止めると。眉を下にさげてファイが視線だけで問うてきた。黒鋼はニヤリと口角を上げた。
「そんなに待ちきれなかったのか?」
「黒様の・・・イジワル・・・あっ・・・」
 内腿を撫でる手がすっと上へと動き、ファイの中心を優しく掴んだ。無骨な手、力強いのに優しい手がファイをどんどん昂みへと近づけてゆく。
「はぁっ・・・あぁっ・・・」
 嬌声(こえ)を上げるファイに更に煽られた黒鋼は、胸の飾りに口を寄せた。尖りを口に含む。
「ああぁんっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」
 ファイの唇から、高い啼き声は歯止めが失く、羞恥もまた失いように思う。
 始 め か ら ト ん で い る 。
 先よりも荒くなる呼吸。体温もさらに上昇したのか、汗が肌を湿らせる。絶頂へ導くための手の滑りもよくなり、水音も早い段階から鳴り出している。
「ヤ、ん…くろ、しゃ…まぁ…っ、はやくぅ……!」
 びくりと腰に留まらず、全身に痙攣が弱く広がり、絶頂が近いのだと察する。胸の果実を含み、虐めている頭部は、当にファイの両腕によって拘束されている。
「んぁっ、ア! も…でちゃッ、くろしゃまッ、オレ、オレ…!! ダメ、ダメぇえ…ッッ!」
 何がダメなのか、子どものように言葉を羅列させ、白い肢体は絶頂を迎えて酷く敏感に、敷布の上で跳ね上がる。
 はぁ、はぁ、と荒い息をファイをついた。そんなファイの様子をちらっと黒鋼は見た。布団についた両脚を広げてみたが、抵抗はない。抵抗がないのを良しとして、ファイの後孔に手をのばすと、さきほどの白濁が後孔にまで垂れていた。一度達したとはいえども、ファイの後孔の入り口付近に触れただけで、びくんっと反応する。
 黒鋼はそのまま後孔に触れた。自ら指を受け入れようとしているかのように、優しく解すこともなくすっと入ってゆく。中で指を動かすと、ファイが再び身体を震わせた。
「ああぁんっ・・・はぁっ・・・くろ・・・さまぁ・・・っ・・・」
 ファイが黒鋼にしがみつく。再び指を動かしてやると、ファイが訴えるような瞳で見つめてきた。
「黒、様・・・早く・・・お願い・・・」
 欲しくて仕方ないのだろう、黒鋼にしがみつく手に力が入る。
「どうして欲しいのか言ってみろ」
「っ!黒・・・様・・・お願い・・・」
「ちゃんと言えばしてやるよ」
 黒鋼の言葉にファイは頭を振った。
「なら、このままだ」
「黒様ぁ・・・お願い・・・い・・・れて・・・」
 ファイが願いを口にした瞬間、ファイは俯せに布団に押しつけられていた。
「…あっ」
 強制的に体勢を変えられた衝撃を自覚する頃には、やわらかく解けて物欲しそうに疼く秘処へ、楔の先端を宛がわれていた。ファイが感触を認識した反応を確かめてから、黒鋼は侵入を始めた。
「ふアぁッv あッア、ァッあ、ンひゃ…v」
 ―――黒さまだっ! 黒さまが、黒さまがオレの央に挿入ってる…!
 ファイの普段の夜の営みでは見られない、慾に溺れた悦びように、色香に中てられた黒鋼は違和を感じる余裕がない。自身を収める動きを止め、快楽に打ち震えている尻を軽くぺちんと叩いてやる。
「あンッ。…黒さま? なんで止まるの?」
 肩越しに振り返る表情は、無垢なほど不思議そうだ。その瞳が情慾に澱んでいるのを除いて。
「云えばしてやる。俺はそう云ったぞ」
 そう切り返してやれば、疑問符を浮かべる。そして先の自分の言を思い出したのだろう。閃いた表情をし、また情慾の蒼が見上げてくる。
「アツいの、いっぱい、いっぱい! オレに注いでほしい、です!」
 頂戴、っと潤んだ瞳が黒鋼に乞うてくる。ぞくり、と黒鋼はした。
「で?」
 意地悪く黒鋼は聞き返す。
「具体的になんだ」
「…ッ!」
 尋ねると、「い、いじわる!」とファイが言う。
「おまえをこのままにしてやってもいいんだぞ」
 戯れに後孔を黒鋼が指で入り口付近にさわると、白い体が反応する。
「あ、…うっ」
 お遊び程度に後孔にふれていれば、ファイはその度に声をもらしていた。
「放置されるのと、続けるのとどっちがいいか、返事次第だな」
 言ってる間も、ファイのものに手を這わせ、黒鋼は弄んだ。
「や、だっ。ほし…いの…!」
「何を?」
「く、黒、様の…っ」
 ふれている手の動きを黒鋼は止めない。
「黒様の、おおきい、おちんちんちょうだい…っ」
 言葉の終とほぼ同時に黒鋼が再び侵入を始めた。
「ああっ・・・!」
 恍惚の表情を浮かべるファイの胸へと手を伸ばす。尖端をつまみながら反対の手でファイの中心を扱いてやると、ファイは背を反らせて悦んだ。
「く、ろさ、まぁ・・・もっと・・・お願い・・・」
 黒鋼の両手がもたらす刺激だけでは足りないのか、ファイが更にねだる。腰を艶めかしく振り、黒鋼を煽り続けるファイ。
「この口で、ちゃんと言え」
 黒鋼がファイの唇に触れた。
「黒様、ねぇ、お願いだから・・・ああっ・・・」
 脚の間から離れた手が胸をくりくりと摘み、快感が突き抜けても、ファイの願いは止まらない。
「おね、がい・・・動いてぇっ・・・」
「お前、さっきから〝お願い〟ばかりだな」
 思考が巧く回っていないのは判り切っている。何度も繰り返す言葉に、黒鋼の加虐心は増すばかりだ。
「え……? 動いて…って、云ったよ?」
 唇に触れていた指は、口寂しい慰めのようにファイ自らが咥え、舐めて甘噛みの愛撫をしていたのを引き抜く。銀糸が指先と唇を繋ぐも、ぷつりとすぐに切れる。
「具体的に云えねぇんなら、ここで終いだな」
 唐突に切り上げる算段をされ、指を回収された次は、熱塊も回収するために体内から退いていく。
「ン…ゃ、ヤだよぉ!」
 内壁を擦られる快楽も混ざりつつ、ファイは拒絶の言葉で啼く。引き止めるために秘処は、きゅうぅ、と収縮する。ひとまずは抜かずに、黒鋼は会話を再開させる。
「一辺倒でつまらねぇ。俺は、どうやって 犯 さ れ た い のか、訊いてんだ」
「どう…、やって…。黒さまの…スキに」
「なら、放置っていう手段もアリだな。観ててやるから、ひとりで勝手に盛り上がって、ひとりで乱れてろ。俺はどうやって犯されたいか、と聞いてるんだが」
 ファイから白濁がでてるそれに、黒鋼は手をやり、根元をゆるく握る。
「ひ…っ!」
 びくっとファイの体がこわばった。予想外だったらしい。緩く握られただけなのに、たらたらと流れる体液が黒鋼の手を濡らして、ファイの欲が更に増してゆく。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
 ファイの息づかいが黒鋼を煽るも、黒鋼は手を添えたまま、動こうとはしなかった。
「黒、様・・・」
「なんだ」
「手、お願い、動かして下さい」
「自分で動け」
 黒鋼の冷たい答えに、ファイは戸惑っていたが、最後には自分で腰を動かし始めた。
「はぁっ・・・はぁっ・・・ああっ・・・」
 ほんの少しだけ緩い黒鋼の手。ファイは腰をくねらせ、黒鋼の掌に自身を擦りつけるように腰を振った。腰を自ら振るということは、央へ納まる楔とも連動し、次第に前と後ろ、どちらの快楽を追っているのか曖昧になる。
「ぅあッン、ヤ、あッアッ!」
 粘着質な水音、艶めかしい嬌声、色香漂う荒い吐息。室内はそれだけでとても淫靡であり、咎める者も、邪魔も入らずに空間は支配されたまま。
「あっッ、くろ、ひゃまぁア…! 動いてぇ! オレの、ナカ…ぐちゃぐちゃなのぉ…!」
「そうだな……。絡みついて、締め付けて。離しゃしねぇ。旨そうにしゃぶりつくなぁ?」
「ひゃあぁッ……ッッ!!」
突き出されるリズムへ合わせ、濡れそぼった秘処へひと突きしてやれば、嬉しそうにそれは好く啼く。反応は恐ろしく良い。そのまま黒鋼が突いていると、ぐっと後ろがしまる。
 普段より様子がおかしかったのは、黒鋼との情事がもの足りなかったのか。それとも喧嘩してる最中に性欲をもてあまして誰かとシていたのか。ファイのいいところをつきながら、黒鋼は内心どろっとしたものが渦巻くのを感じていた。
 無意識に律動が早まる。最奥を突けば突くほどファイは乱れ、内心の疑惑は大きくなり、攻めが激しくなる。そしてそれに応えるファイの身体は、更に黒鋼を煽り続ける。やがて添えていただけだったはずの手も、無意識にファイ自身を握りしめていたようだった。
「ああっ・・・くろさまぁんっ・・・」
ファイが一嬌声啼き、意識を手放した。しかし黒鋼は攻め続ける。意識を失い、激しい律動に起こされ、それを何度も繰り返した。
「はぁっ・・・なんで今日は・・・」
 こんなにエロいんだ、という言葉を飲み込み、もう一突きすると、黒鋼は遂に白濁を放出した。ファイも同時に果てている。
 黒鋼は息を整えながら、隣で眠るファイを見つめていた。



◇◇◇◇◇



 雀が鳴く声が庭から聞こえ、障子越しに柔らかな陽射しの感触もする。もう大分陽が高いようだ。はて。それではいまは何時なのか。
「朝か!?」
 がばりと黒鋼はいつもにはない、寝坊に大きく掛布団を跳ねさせて起き上がる。
「ぅぅ…ん」
「!」
 声を聞きつけ見やれば、素肌のままのファイが横たわり、寒さに身を縮ませている。涙の痕も、泣き腫らした痕も白い頬に残っており、昨夜のことが走馬灯で脳裏を駆けていく。
 思い出し、目許を片手で覆う。在られもない、己と家人に羞恥さえ湧きそうだ。ふるっとファイが震えたため、黒鋼はファイに布団をかける。
「むーっ」
「変な寝言だな」
 戯れに鼻をつまんだら、むぅっと顔をファイにしかめられた。ぱっと手を離す。何の夢をみているのか、とそのままファイをみていたら、ぴくりとファイのまぶたが動いた。起こしてしまったらしい。目がうっすらとあく。
「くろ、たん」
 呼ばれる渾名。へにゃんとファイが笑う。
「おはよー」
「おう」
 黒鋼が答えると、へにゃんとした笑みはそのまま。いまだ夢見ごこちらしい。昨晩のことは覚えているのか。そのまま、黒鋼がみていたら、ファイの目がまるくなった。ついで、自分の姿と黒鋼を交互に視線をやるファイ。ぼんっと真っ赤になり。ファイが動こうとして、「!!いたっ!」と声をあげた。
「無理すんな」
 そう言いながら黒鋼がファイにのし掛かる。
「えっ、黒、様・・・オレ・・・これ以上はやばいんですけど・・・」
 黒鋼は、顔を引きつらせてそう言ったファイの顎を救うと、唇が触れそうな位置まで顔を近づけこう言った。
「で?どういうことだ?」
「え?どういうって・・・っ!!」
 ファイは一瞬で昨日のことを思い出した。そう、昨日は不思議な店で貰った怪しい液体を茶に入れて飲んだのだ。
 何の効果があるのかも分からないまま。
 そして身体が熱くなって、すごく欲しくなってしまって・・・。
「え・・・と・・・・」
 思わず目を泳がせると、容赦ない声が飛んだ。
「俺の目を見ろ」
 恐る恐る瞳を合わせる。黒鋼は明らかに答えを待っている。そして気が短い。こうなってしまっては、逃げられないことを、ファイは経験から知っていた。
「あのね、よくわかんない・・・」
 自分でも分からない液体の事をどう説明したら良いのか分からず、それだけ言うと、案の定黒鋼は不機嫌そうに唸った。
「あぁん?」
「えっと、お店で小瓶を貰ったの・・・えっと・・・でも、何なのか説明もなくて・・・」
「はぁ?」
 ファイのたどたどしい説明に黒鋼は何となく話は理解したが、瓶を貰うというのがよく解らず首を捻った。
「なんだ、貰ったってのは」
「店自体は、四月一日くんが居るみたいな〝店〟と似たようなのがね、あって…」
 引き込まれたようにふらりと入ることになった店。そこの店主だろう老婆に仲直りのきっかけになるからと、渡されてしまった小瓶。
「それで店を出ちゃったんだけど。やっぱり返そうと思って振り返ったら、店ごとなくて…」
 仕方なしに持って帰ってきたが、試しにと数滴を垂らした茶を飲んだのだと、赤裸々告白をしてしまった。はぁ、と黒鋼がため息をつく。だって、とファイが言った。
「謝りたかったけど、謝れなかったんだもん…。意地になってたって言うか…」
 ぼそぼそファイが続ける。
「嫌いになった…?オレのこと」
 じっと黒鋼を、ファイは見る。蒼い瞳には涙がたまっていた。
 ―――は、反則だろ・・・。
 黒鋼は内心呟いた。そんな潤んだ瞳で嫌いになったのか、などと問われたら、許すしかないに決まっている。しかし素直に告げるのも悔しくて、黒鋼はぼそりと呟いた。
「もういい」
「え?」
目の前にいるのに上手く聞き取れず、ファイが聞き返すと、黒鋼はファイの頭をわしゃわしゃした。
「わー、黒さまっ!」
 逃げようとしても無駄である。しかし黒鋼は不意にその手を放すと、ファイに言った。
「その小瓶を寄越せ」
「え?」
「んなアブねぇモン、いつまでも持ってるわけにもいかねぇだろ。処分する」
「う、…うん。そうだよね……」
 あの小瓶は何処へやったかと、昨夜の記憶を辿ってみるも、茶へ入れたあと座卓へ置いたような気もする。そして、夕餉の支度もそのままに。あの状態から、片付けられている可能性はない。ならば。
「多分、食卓の上にあると思うけど…」
 徐に黒鋼は立ち上がる。下肢には自分だけしっかり穿き、寝所をあとにする。動きにくい身体で、何とか傍らに脱ぎ捨てられていた着物へ手を伸ばし、袖を通す。
 しばし待っていれば足を音がいつもより控えめな黒鋼が戻ってくるのが判った。出て行ったのは襖がある廊下側なのに、何故か庭に廻っている。唯一庭に面した寝所の廊下側は障子であり、その影が障子越しに映りこむと、障子が開けられ、何処か釈然としない表情があった。
「おい。小瓶、見当たらねぇぞ」
「えぇ?!」
 使うと解決する、と店の主は言っていた。…ということはつまり。
「解決したから、役目を終えたから小瓶はなくなった…?」
 ファイは思ったことをそのまま、声にだしてしまったが、そう考えるとしっくりくる。しかしそれを聞いた黒鋼は片方の眉を上げた。
「役目を果たしたからといって、勝手に消えるか?」
「んー。四月一日君のミセみたいなお店だったから、何か力があったのかもねー」
「だったらお前が受け取った時に気付くだろうが」
「うーん・・・」
 ファイは暫く首を捻っていたが、最後にこう言った。
「やっぱりわかんない!」
「なんでだよっ!」
 ファイはペロリと舌を出した。
「だから、魔力に気付かないくらい、凹んでたってこと」
「解決になってねぇ」
 黒鋼はむすっとしたままそういうと、再び口を開いた。
「茶。変な薬の入ってない奴な」
「はーい」
 ファイは明るい声でそう言うと、ニコニコしながら台所へと向かったのだが。
「うっ!!」
 元気よく廊下を歩いていたかと思えば、壁に寄りかかりずるずると崩れていく。
「どうした?」
「……こ―――腰、痛くて…歩けない…っ…」
「………あー」
 その要因には、充分すぎるほど心当たりがある。ううう…と蒼い表情をしている家人の傍らへ屈み、ひょいと軽い身体を抱き上げる。
「黒たん…」
「湯、沸かすくれぇしか手伝えねぇぞ」
「…何云ってるのさ、オレよりお茶淹れるの、巧いクセに」
 照れ隠しにもならないそんな云い訳を、くすくす笑う。便乗とばかりに首へ腕を廻し、今日の乗り物となってくれた彼へ、GOの合図を。
 その日、黒鋼は休みを知世姫に申請し、登城するのは夕方と相成ったのだった。



◇◇◇◇◇



 それから数日後のとある日。白鷺城の一室。蘇摩が机に小瓶を置く。
 上座には知世姫が座り、知世姫の隣には蘇摩が控えている。下座には黒鋼が座っていた。
「この小瓶の中身のことですが」
 蘇摩が話し出す。小瓶とはファイが怪しげな店でもらったという小瓶だ。
「中身を確認したところ、催淫剤の効果をもつ薬のようです。いわば、媚薬ですね」
「媚薬か」
 なるほど、と黒鋼は心の中で呟く。ファイの様子は媚薬を飲んだせいだったのか、と合点がいった。
「このようなものをファイさんに手渡したという人物は今、究明中です」
 蘇摩が続ける。それまでだまっていた知世姫が、「…にしても」と一言言った。
「何が原因かは知りませんが、ファイさんと黒鋼が喧嘩したとき、ファイさんはとても元気がなかったのですわよ。食事も少なめで、表情は暗くて。この薬をのまなければいけない程にファイさんは悩んでいらっしゃったのでしょう?」
 なにかいいたげな黒鋼を、知世姫は真っ正面から見据える。
「何か申し開きがありまして?」
 にっこりと知世姫が微笑んだ。むかしから黒鋼は知世姫には勝ったことがない。言い合いにしろ。
「これから善処する」
 黒鋼は一言告げた。にっこり知世姫は微笑む。
 …とはいうものの、たまに喧嘩(城内では痴話喧嘩と認識されている)し、白鷺城の名物になっていることは、当人たちはあずかりしらないことであった。


  END
 




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