小説 鷹の口づけ


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本誌沿い

171話より 「包帯」前夜

2013.07.15  *Edit 

 「包帯」前夜

 ふわり、と異世界に到着したか否か。ファイは大声で呼びかけた。
「黒様、黒様、目を開けて!」
しかし、何度呼びかけても、黒鋼は目を開かない。それどころか、ぴくりとも動かない。小狼も、モコナも、心配そうに黒鋼を見つめている。
「黒様、お願い!目を開けてっ・・・」
ファイが何度も呼びかけるも、虚しく木霊するばかりだ。
「動かさない方がいい。それよりも何とかして出血を止めないと・・・」
小狼がそう言った時、遠くからやってくる蹄の音が聞こえた。
 そして、天照と蘇摩達忍びの者、そして知世姫がいるであろう車が見えた。蘇摩は到着すると、医療忍者の指揮を執り、黒鋼を担架に乗せるよう指示した。失血が激しいせいだろうか、医療忍者達の様子から、腕を切り落とした黒鋼の容態は命の危機に晒されていることがわかる。
 黒鋼にすがりつく、ファイ。
「黒様死なないで・・・もう、誰もオレを置いていかないで・・・」
いつの間にか、頬を涙が伝う。運ばれてゆく黒鋼にファイは泣きながら追いすがった。
しかし、治療の邪魔をするわけにもいかない。思わず膝をついた時、そっと頬に手が伸ばされた。
「大丈夫です」
いつのまにか知世姫がファイに歩み寄っていた。
「黒鋼は死にません」
ファイは驚いて知世姫を見上げた。流れる涙を拭うこともせず、ただただ、知世姫を見つめていた。


 白鷺城に着くと、黒鋼は病室とは違う治療専門の部屋に寝かされ、医療忍者がつきっきりで治療に当たった。ファイも、小狼(モコナ付き)も、毎日治療室を訪問したが、ずっと面会謝絶だった。
 ファイはずっと黒鋼の治療室の前に座り込み、寝ようともせず膝を抱えていた。それを見かねた蘇摩がそのすぐ近くの部屋にファイの寝室を移し、少しは寝るようになったものの、ファイは起きているほとんどの時間を黒鋼の治療室の前で過ごしていた。

 初めて会った時から、色々なことに嘘をついていた自分を救ってくれた黒鋼。それを責めるでもなく、言葉通り身を挺して救ってくれた。セレスに自分だけが残されてもいいと思っていたのに。生きることを諦め、自分の幸せから逃げようとしていたオレを、「俺に殺されるまで生きていろ」と、彼なりの優しさで救ってくれた。
 こんなに大切にしてくれる人を、優しい人を、失うわけにはいかない。失いたくない。せめてこの気持ちを伝えるまでは。
 知世姫は、言った。
「謝られても、黒鋼の腕は戻りません」
ファイは謝ることより大事なことがあることに気づいた。
 東京で感じていた怒りは、感謝の気持ちに変わっていた。黒鋼に言えるだろうか。この、想いを。
「ありがとう、黒様・・・オレ、初めて、生きていたいと思えたよ」
思わず呟いた時、治療室のドアが開けられた。
「もう大丈夫です。寝室に移動します」
医療忍者の声に、思わずファイは体中の力が抜け、その場にへたり込んだ。
 黒鋼がやはり担架に乗せられて運ばれてゆく。しかし、その顔には返り血は付いていなかったし、フランケンシュタインのような傷跡もなかった。
「少し、きちんと寝ないと身体に毒ですよ」
蘇摩が声をかけた。朝日が差し込み始めていた。
「うん、ありがと。黒様の顔を見たら安心して眠くなってきたよー」
ファイは微笑むと、自室へと向かった。

「オレのせいで、ごめんね」
を封印しよう。そして目覚めた黒鋼に言おう。
「お返しだよ、黒様」
握りしめた拳に、愛を乗せて。



END






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