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小説 鷹の口づけ


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堀鍔学園」
堀鍔学園(つづきもの)

アプローチ その2

2012.04.29  *Edit 

その2

唇を離し我に返ると、とてつもない恥ずかしさがこみ上げてきた。慌てて言い訳する。
「ごめん、おれ、だいぶ酔ったみたいだ」
真っ赤になって俯いた。黒鋼は微塵も動じず、言った。
「酔っぱらいがキス魔になるのはよくあるじゃねぇか。じゃ次だ。言っとくが、可笑盃は全種類の盃で呑み終わるまで終われねぇぞ」
「そんなー! 飲み始める前に言ってよ!嘘だよね?」
思わずユウイは叫んだ。
「だから決まってるって言ってんだろ。それに半分俺が飲んでるだろうが」
黒鋼はそう言いながら羽盃を取り出した。盃の左右の縁に、まるで翼が生えているかのように白い羽根が一つずつついていて可愛らしいデザインだ。
さっと、ユウイが奪い取る。
「何しやがる」
しかしユウイはぺろっと舌を出し、
「返してあげな~い」
と言うと、背中の後ろに隠した。
「ガキみたいな事やめろ」
黒鋼のちょっぴり怖い声も、お酒のせいかあまり気にならなかった。ユウイは言った。
「呑むかは別にしてさ、この盃、可愛いよね。オレも羽根が欲しいなぁ」
「別にすんな」
黒鋼は盃を奪い返し、酒を注ぐとユウイに押しつけた。
「えー、おれが飲むの?黒鋼の方が飲んでる量が断然少ないと思うけど?」
「変わんねぇよ。3杯ずつだ」
「ちぇー。酔っぱらいに呑ませるんだー」
ぷくぅ、と頬をふくらませたが、結局ユウイが羽杯を飲み干した。

羽杯をユウイが飲み干すと、黒鋼は言った。
「じゃ最後だ。これは面白いぞ。サイコロを振るんだ」
なんだか黒鋼は呆れながらも楽しそうだ。それは四角い盃が、大中小と三つあり、サイコロを振って出た大きさの盃で呑まなければならない、というものだ。
サイコロを黒鋼が振る。小さい盃の目だ。
「なんだ、こっちで呑みてぇのに」
黒鋼はそう言って酒を飲み干すとユウイにサイコロを渡した。ユウイはサイコロを振った記憶なんて無い。ぎこちない手つきで振ると、一番大きい盃の目が出た。
「うそー。何か細工してない?」
黒鋼はくすくす笑って言った。
「どうやって仕掛けるんだよ。一息に呑めよ」
「うぅっ」
仕方なく飲み干すと、ユウイは言った。
「一回振ったからもういいんでしょー?」
しかし黒鋼は首を振った。
「3種類ともを、二人がそれぞれ呑むんだ」
「えー、だって、サイコロなんだからずうっと同じ目が出たらどうするの?」
「決まってる、何回でも呑め」
「うっそー!」
「いいじゃねぇか、その分沢山呑める」
黒鋼は楽しそうだった。


「もーう歩けないいよおっ」
ユウイはプンスカ怒って文句を言った。
3種類の盃の目を出すまでに、なんと5回も大きな盃の目が出てしまったのだ。
立ち上がろうにもふらふらで、まっすぐ立つことなど到底出来ない。ユウイが持ってきた日本酒はとっくに無くなり、黒鋼の酒にまで手をつけていた。
「おまえ、笊だって言ってなかったか?」
黒鋼が不思議そうに言った。
「枠の黒あねと一緒にしてなぁい? 日本ちゅなんて呑まないかあだよぉ」
呂律が回っていない。
「もう、しぇきにん(責任)ー、取おってよねー、くろあねぇー」
ぷうっ、と頬をふくらませ、ヨロヨロと這って黒鋼に近づいた。黒鋼はまだまだ涼しい顔だ。
「もう盃もおわっちまったな。じゃぁ、ワインいくか?」
「もうのめませーん! くろあねひとりで呑んでー」
黒鋼はふっと意地悪な笑いを浮かべると、言った。
「だめだ。お前が誘ったんだからな。無くなるまでつきあえ」
「えー、たーおれちゃうー」
「つきあえ」
渋々と、ユウイは自分のグラスを差し出した。



呂律が回らないユウイをからかうのは面白い。別に一緒に呑まなくても、隣にいて話すだけでいいのに、律儀に呑もうとするから、おもしろ半分で注ぎ続けた。
「くろあねはぁ、ファイのこと好きなのー?」
不意にファイの名前が出てきて黒鋼はギクリとした。別に悪いことをしているわけではないが、飲み明かすならなぜ誘ってくれなかったのか、と言われることだろう。黒鋼が答える前に、ユウイは言った。
「おれはね~、くろあねの事が好きなんだよー」
「えっ・・」
黒鋼は息を呑んだ。まさかと思っていたが、でも、本当に好きなら酔っている時に言うだろうか。
真偽のほどを確かめようと、ユウイをじっと見つめると、ユウイは
「ほんとだよ~」
と言って、畳の上にゴロリと横になり、寝入ってしまった。
黒鋼は、小さくため息をつくとユウイを抱え上げ、ベットへと運んだ。



ユウイをベッドに寝かすと、黒鋼は再びため息をついた。ユウイは本気なのだろうか。ベッドの横に予備の毛布を持ってきて座ると、黒鋼は目を閉じた。
「おれはね~、くろあねの事が好きなんだよー」
ユウイの台詞がリフレインする。とても寝られそうにない。ユウイが持ってきたワインがまだ残っていることを思い出し、グラスに注ぐと一息に飲み干した。
「ふぅ」
こんなにも、自分の気持ちがわからなくなったことなど有っただろうか。記憶にない。
ユウイはファイと同じ顔だけあって(双子だから当然だが)、綺麗だ。蒼い瞳も、柔らかな金髪も、透きとおった肌も。時折見せる表情だけが二人の違いをそっと表現している。
人は飲み交わせば互いを知るという。今夜は正に違いを見せつけられた感があった。
二人は違う人間なのだから、あえてファイと比較することは最低限に留めた。しかしどうしても違いが際立った。
ファイは笑い上戸だが、呂律が回らなくなるほど呑んだことはほとんど無い。多分ユウイは日本酒を飲み慣れていないから酔いが回るのが早かったのだろう。
その、呂律が回らないまま喋っている様子も、何か惹かれるものがあって、ドキリとした。文句を言いつつ結局負けて呑まされた様子は、なんだか可愛らしかった。
キスされた瞬間は驚いた。ただ唇を重ねただけなのに、肢体が震えた。ファイもキス魔だが、こんなにも愛しい気持ちが唇を伝ってきたことなど有っただろうか。
考えれば考えるほど、愛しい気持ちばかりに気付く。しかし、ファイがなんと思うだろうか。自分の気持ちに正直になるべきだろうか。ファイを想う気持ちに、少しの変わりもないけれど。
目覚める前に、心を決めなければ。



ユウイは目を覚ました。まだ外は暗いようだ。ほんの少しの頭痛に顔をしかめながら上半身を起こした。やっと、辺りの様子が自分の部屋と違うことに気づき、夕べの出来事を思い出した。
そう言えば酔った勢いで告白してしまったのだ。そのために来たとはいえ、思わず赤面する。黒鋼は何処にいるのだろう。よく見れば、自分が寝ているベッドの横に毛布が置いたままになっていた。
「起こしちまったか。大丈夫か?」
不意に黒鋼が現れた。頭痛の心配だとわかり、ユウイはホッとして口を開いた。
「うん、大丈夫。ありがと」
一瞬、二人は黙ってしまった。そして黒鋼が先に口を開いた。
「それで、本気か?」
「えっ」
ユウイは真っ赤になった。本気だと答えたら、どうなってしまうのだろう。それにしたって、こんなにストレートに訊くことないのに。
黒鋼は、枕の横に腰掛けた。そしてもう一度尋ねた。
「本気か?」
ユウイは心を決めた。自分の気持ちを伝えるために、ここに来たのだから。
「うん。おれ、黒鋼のことが好き・・・」
ユウイはそう言うと、夕べ訪れた時と同じ半裸の黒鋼をまっすぐに見つめた。
黒鋼はユウイの肩へと腕を伸ばし、そっと抱き寄せた。そして耳元で囁く。
「俺の負けだ。お前に堕とされた」
息が耳にかかり、ユウイはぴくっと肢体を震わせた。そして瞳を見開いて黒鋼を見上げた。
「本当に・・・?」
「あぁ、本当だ」
黒鋼はそう言うとユウイに口づけ、そのままベッドに倒れ込んだ。


 END




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