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小説 鷹の口づけ


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堀鍔学園」
堀鍔学園(つづきもの)

独り占めしたいでしょ? その4

2012.07.01  *Edit 

その4.

日曜の朝、ファイが目覚めても黒鋼は帰っていなかった。
「お泊まりなんて・・・やっぱりユウイと一緒なのかな・・・」
デートを断られた時にどんな用事なのか訊かなかったのは怖かったからだ。あれだけ自分から見ても最低なことをしてしまって、ファイは再び大きく後悔していた。
車の音がして、ファイは通路に出てみた。暫くしてエレベーターから黒鋼がユウイと一緒に降りてきた。ユウイがはっとして立ち止まった。
「おはよう、黒ぽん」
ファイの声はほんの少し震えていた。
「あぁ」
「黒ぽん、今日ヒマだったらデートしない?」
「昼までなら構わねぇが。じゃぁ今日の荷物運び手伝え。午後から練習試合があるんだ」
「うん、わかった」
その間、ファイとユウイはお互いに目を合わさない様にしていた。
「?」
黒鋼は怪訝そうに二人を見ていた。夕べユウイはファイのことをやたらと気にしていたが、ファイの様子もおかしい。すっと黒鋼の脇を横切りユウイが自室に入っていった。
「じゃぁまたな」
黒鋼はユウイに声を掛けたが、ユウイの耳には届かなかった。



「黒鋼先生」
翌日、星史郎に呼びかけられ、黒鋼は露骨にイヤな顔をして振り向いた。
「私と話す時はいつもそんな顔をなさいますね。何か気に障ることをしたでしょうか?」
黒鋼は機嫌悪そうに言った。
「別に何も。で、何の用だ?」
星史郎はクスリと微笑むと言った。
「ユウイ先生を譲って貰えないかと思いまして」
「あぁん?何言ってんだ?」
黒鋼は思いっきり訝しんで聞き返した。
「譲っていただけませんか?」
黒鋼は眉間の皺を3倍に増やすと言った。
「譲るも何も、あいつは俺の所有物じゃねぇ。本人に言え。振られたんなら諦めろ」
「所有物じゃないんですね?じゃ、噂どおりなのかな、真実は」
黒鋼は星史郎が何を言わんとしているのか分からなかった。
「噂ってなんだ?」
「さぁ、噂は噂ですから」
星史郎は微笑むと続けた。
「ではお言葉通りもう一度ユウイ先生の所へ行ってきます。もしもどうしても噂のことを知りたいなら、意外とファイ先生がよくご存知かも知れませんよ。では」
星史郎は踵を返すと調理準備室へと歩いていった。
「ファイが何か知ってる?」
黒鋼は化学準備室へと行き先を変更した。


「わぁ、黒様、いらっしゃーい!」
ファイが嬉しそうに黒鋼に抱きついた。
「授業の合間に来てくれるなんて珍しいね~。オレも会いたかったから超嬉し~」
ファイは湯飲みを取り出すといそいそとお茶を入れた。
「はいどうぞ」
「あぁ」
黒鋼はお茶を一口飲んでから、おもむろに口を開いた。
「お前、俺達3人に関してだと思うが、何か噂を知らないか?」
「!」
ファイは明らかに動揺して言った。
「え、噂?って?オレ達3人って、オレと黒様と、ユウイのこと?」
「あぁ、多分な」
紅い瞳がファイをじっと見つめている。
「さぁ、なにかな・・・知らないけど・・・」
ファイは眼を逸らして答えた。黒鋼は立ち上がるとファイの顎を掴んで顔を自分に向けた。
「言え。知ってるんだろう?まさかお前が何かしたんじゃないだろうな?」
「黒様、痛いよ」
黒鋼はファイの腰を押さえてから顎を掴んでいた手を放した。
「早く話せ」
怒りの籠もった言い方に、ファイはやむを得ず口を開くしかなかった。
(もしかしたら、黒様に嫌われちゃうかも・・・)
あんな事をするのではなかったと、またもや後悔が波の様に押し寄せてきた。しかしいつまでも黙っているわけにはいかない。下を向いて話し始めた。
「あのね、オレ達、この学園に赴任した時からつきあってるでしょ」
「あぁ」
「その事を、ちょっと、言ったの」
黒鋼は眉間の皺を増やした。
「なんて言ったんだ?」
ファイは、俯いたまま言った。
「オレ達二人はつきあってるから、チョコはいらないよって・・・」
「何のために?」
ファイは答えられなかった。
何のために?
黒鋼を独り占めしたいから。そんな自分勝手な理由でユウイを傷つけてしまったかも知れない。そしてこんな話をして黒様に嫌われてしまったら、オレは・・・。
ぽたり、と涙が零れた。黙ったまま俯いているファイの顎を再び掴んだ黒鋼は、そっと涙を拭ってやると言った。
「泣くほどの理由があったのか?」
ファイはふるふると首を横に振ると言った。
「オレ、黒鋼を独り占めしたかったから・・・ユウイに渡したくなくて・・・」
「そうか。やっぱり双子だな」
黒鋼は嘆息した。
「えっ?」
トントン
ドアがノックされ、なんとユウイが入ってきた。
「ファイ、星史郎先生に聞いたんだけどおれに用って何?」
「え?」
「え? 黒鋼、なんで此処にいるの? あ、おれ、また来るね」
驚いて帰ろうとしたユウイを黒鋼が引き留めた。
「待て。なんだか知らんがちょうど良かった。お前も此処で話をしていけ」


黒鋼は大きな溜息をつくと、言った。
「つまり、こういう事だな。ファイが俺とつきあってると言いふらした。それをユウイが聞きかじって落ち込んでいた。ファイはファイで俺とユウイが出かけたのを知って落ち込んでいたわけだ」
「じゃぁ、黒鋼はファイとつきあってるんじゃないの?」
ユウイが訊いた。
「つきあうという表現をするなら、俺は二人ともとつきあってることになるな」
「二股じゃん!」
「それ、二股だよ!」
双子が叫んだ。黒鋼は双子をギロリと睨んで制すると、言った。
「いいか、俺はお前ら二人共を愛してる。だがお前らのどちらも選ばねぇ。それは逃げているんじゃない。どちらも選べないからだ。もしも俺がどちらかを選んだらおまえらはその後どうするんだ? 前に世界でたった二人の兄弟だと言っていたな。俺が選んだらそのたった二人の兄弟と縁を切ると言うのか?同じ職場、しかも隣りに住んでいると言うのにそんな事が出来るのか?出来る訳ないだろう?」
黒鋼は息を吐くと続けた。
「俺から言えるのは、仲良くしろ。抜け駆けするな。それだけだ。解ったな?」
黒鋼はそう言い残し、体育教官室に戻って行った。
双子は暫く俯いていたが、同時に顔を上げた。そしてどちらからともなく口を開いた。
「ユウイ、」
「ファイ、」
「・・・ゴメンね」
そしてまた同時に言った。
「本当は独り占めしたいけど、我慢するね」


黒鋼が廊下に出ると、星史郎と小龍が話していた。黒鋼はすれ違いざまに星史郎に言った。
「手間掛けさせて悪かったな」
「いえ。お幸せに」
「あぁ」



  END





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