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小説 鷹の口づけ


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堀鍔学園中等部

堀鍔学園初恋物語 ~告白編~

2011.07.25  *Edit 

初恋物語 ~告白編~


その1
三学期の始業式の日、ファイはとてもウキウキしていた。
やっと三学期が始まる。やっと黒たんに会える。
自分と黒鋼が両想いだったなんて、ファイにはとても信じられなかったけれど、日が経つにつれて実感が湧き、とても幸せな気持ちだった。クリスマスに告白された後数日して慌てて年賀状を書いて投函した。そして黒鋼からも三が日のうちに返事が届き、ファイは本当に嬉しくて嬉しくて、届いた当日はなかなか寝付けなかったのだった。
嵐は二人の様子から何かあったとは察していたが、1週間経っても2週間経ってもファイと黒鋼が一緒に帰る気配もないので話を聞いてみることにした。
「ファイ、何かいいことあった?」
ファイは恥ずかしそうに微笑んで言った。
「あのね、黒たんがね、オレのこと・・・好きって・・・」
ほんのり頬を染めてそう言ったファイは本当に幸せそうだ。
「良かったじゃない!それで黒鋼はなんて言ったの?」
「えっ、だから『好きだよ』って・・・」
嵐は内心意外と面白くない告白ね、と失礼なことを考えながら質問をした。
「それで?ファイはなんて返事したの?」
ファイはその時のことを思い出したのか、少しだけ赤く染まっていた頬を更に赤くして言った。
「オレ、びっくりして・・・」
「うん」
「ありがとうって、言ったの」
「うん。それで?」
嵐がは先を促したが、ファイはきょとんとしていた。
「それで、って?」
真顔で聞き返され、嵐は思わず床にがっくりと両手両膝を付いた。嵐は暫くそのままで居たが、顔を上げるとファイに尋ねた。
「付き合おうとか言われなかったの?ってことよ」
「ううん、別に言われないよ?」
あっけらかんと言うファイに目眩を覚えた嵐は、ファイに尋ねた。
「ファイは付き合いたいとか思わないの?って、あれ?じゃあファイ、黒鋼に自分の気持ちを伝えてないの?」
「えっ?あぁ、そうだね。言ってないけど、でも伝わってるよ」
自信たっぷりにそう言ったファイはクスクス笑い出したが、嵐は首を捻った。
「そう?でも黒鋼は付き合ってくれって言わなかったんでしょう?」
「うん」
「普通両想いだって判ったら、告白した方から付き合ってくれって言うと思うわよ」
「そうかなぁ・・・」
ファイは首を傾げた。嵐は言った。
「じゃあ二人は付き合ってるの?」
「あっ、それは違うと思う」
即答したファイに嵐は呆れて言った。
「ファイ・・・せめて告白しなさいよ・・・そうだ!」
と、嵐はファイに指を突き付けた。
「ファイ、貴方手作りチョコを作ってバレンタインに告白しなさい!」
「えぇっ!そんなの無理!」
嵐は狼狽えるファイに更に言った。
「無理じゃない!そして付き合ってくれって言うのよ!」
「無理だってば・・・」
ファイは頭を抱えた。そんなファイに嵐は優しく微笑んだ。
「大丈夫よ、ファイのお菓子、とっても美味しいもの。あと足りないのは自信だけよ」
「嵐・・・」
泣きそうな顔で見上げたファイに嵐は小さく溜め息を吐くと言った。
「仕方ないわね、私も空太の分作るから一緒に買い物に行きましょう」
「うん、ありがとう」
こうしてファイと嵐は手作りチョコの材料を買いに出かけることにした。


「♪ハッピーハッピーバレンタイン バレンタインにキスしよう♪」
流行のバレンタインの歌が流れるチョコレート売り場は正に黒山の人だかりだった。ファイは嵐に言った。
「ね、黒たん甘い物苦手だって前に聞いたの。チョコ好きじゃないかも」
それを聞いて嵐は言った。
「甘い物が嫌いなら、お酒が入った物にしたら?」
「えっ、お酒? 味見できないよ?」
「大丈夫よ」
結局ファイは嵐に強く勧められたウィスキーボンボンにチャレンジすることになり、ついにファイのチョコが完成した。
「嵐、味見してくれない?」
「良いわよ。ファイのチョコ、大好きだもの」
嵐は一粒チョコを摘むと口に入れた。
「んっ、おーいしーvvv」
「本当?よかったー」
ファイは心底安心したようだ。
「カードは書いたの?」
「うん。シンプルにしたけど」
ファイはカードを隠すように抱き締めたので嵐は覗き込もうとした。
「ちゃんと『好きです』って書いた?」
「ええっ、そんなこと書けるわけないよぉ・・・」
ファイは真っ赤な顔を更に赤くしてぼそぼそと呟いた。
「へぇ、じゃ、言うのね?」
「えっえぇっ・・・」
嵐はにっこりと笑うと言った。
「ファイにそんな勇気があるとは思わなかったわ。頑張ってね、応援してるわ」
「そんなー」
こうしてファイは黒鋼に告白することになったのだった。


「どない、うまくいったか?」
「バッチリ!」
「ほな、当日はワイが黒鋼と待ち合わせをするな」
「OK!私はファイね」
「二人は付き合ってくれへんと困るんや」


「黒鋼、明日は部活やろか?」
「あぁ、昼までは部活だが何か用か?」
「昼飯、一緒に食べまへんか」
「あぁ、いいよ」
「じゃぁ12:30に堀鍔公園な!」
「わかった」



「ファイ、昨日空太に黒鋼君への伝言を頼んだわよ」
「嵐、お願い!一緒に来て!!」
「だめよ、関係ない人がいるわけにいかないじゃないの」
「うぅ・・・」
そしてファイはドキドキしながら堀鍔公園に向かった。
黒鋼君は来てくれるだろうか。
そしてオレは自分の気持ちを伝えられるだろうか・・・?
公園のベンチに腰掛け、時計を見ると12時25分だった。あと5分。ファイが大きく深呼吸した時、目の前に人影が現れた。
「あっ・・・」
「おう」
ムスッとした声を出した黒鋼は、いつもより機嫌が悪いように見えた。ファイは心の準備が出来ていなかったから内心焦りまくり、もう、何が何だか解らなかった。
「あっ、こ、こんにちは。良いお天気だね」
確かに今日は快晴だ。
「あぁ」
黒鋼は空汰が居るはずの公園に何故かファイが居たのでかなり焦っていた。会えたのは嬉しかったが、返事を促したいという気持ちとヘマをしたくないという気持ちが交錯し、言葉が出てこなかった。しかし、ふと見ればファイは何か荷物を抱えている。黒鋼はそれを見た時、今日が何の日であるかを思い出した。
(そうか・・・好きな奴に渡すのかな)
がっかりした黒鋼は、最後に、と思い口を開いた。
「空汰と待ち合わせてたんだ。すっぽかされたらしいが」
「え?」
「じゃぁな。頑張れよ」
黒鋼はそう言うとファイに背を向け歩き出した。
「え?何を頑張るの?」
思いがけない黒鋼の言葉にファイは思わず立ち上がった。しかし黒鋼はその歩みを止めなかった。ファイはハッとして黒鋼へのチョコレートを見た。空汰君と待ち合わせていると言っていたし、何か勘違いをしてるのかも。
そう思ったファイは、黒鋼を追いかけた。
「黒鋼君、待って!」
黒鋼は追いかけてくる声に驚いて振り返った。すぐにファイが追いついて、何かを黒鋼に押しつけた。
「嵐に頼んだの。空汰君に伝言をして、って!」
「え?」
今度は黒鋼が驚いて瞳を見開いた。そして思わず口から出た言葉は思いの外冷淡だった。
「空汰に渡すなら自分で渡せよ」
好きなコの橋渡しなんて御免だ。それに空汰には嵐が居る。
「違うの、黒鋼君に来て欲しいって、言ってって頼んだの」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔とはこの事だ。黒鋼は自分の顔を指さして尋ねていた。
「え?俺?」
ファイは真っ赤な顔でコクコクと頷くと、
「よかったら食べて!」
と言って走り出した。
「おい、待てよ!」
黒鋼が叫んだが、ファイは早くも公園の入口にいて、声が届くはずもなかった。
「うそだろ・・・アイツから俺に?嫌いなんじゃなかったのか?」
そう。
ファイは三学期から浮かれっぱなしで気付いていなかったが、黒鋼とは殆ど話す事のないままバレンタインを迎えていた。黒鋼は好きだと言ったものの、ファイが自分をどう思っているか聞きそびれていたし、三学期になって話をする機会があまりなかったので、てっきり避けられているのだと思っていたのだ。
「信じられねぇ・・・」
黒鋼は嬉しそうにプレゼントを抱え直すと、ゆっくりと公園を出て行った。


その2
翌週、生徒会室に役員の面々が集まった。
「さて、そろそろ予餞会の準備に入らなければなりません。分担は資料の通り。あと一月ほどですから漏れ落ちのないようにお願いしますね」
星史郎がそう言うと、はーいと声が上がった。
「本当に何やってるのかしら・・・」
嵐はまだぶつぶつ言っていた。
「だって・・・」
「わかってるわ、空太がファイが待ってるって言わなかったのが悪いんだし」
嵐はそう言うと空太を睨んだ。しかし空太は黒鋼と話すのに夢中で全く気付いていなかったから意味はなかった。
「とにかく渡せたから、オレ・・・」
「あーあ、やっぱりカードに書いてもらえば良かったわ」
嵐は大きく溜め息を吐くともう一度空太を睨んだ。空太が気付いた。
「なんやハニー♪」
嵐は空太を無視してファイに向き直った。
「仕方ないわ。人に伝えてもらう訳にもいかないし」
「うん」
ファイがほっとしたように言った。
「じゃ、せめて一緒に帰ろうって言ったら?」
「そんなの無理!だって黒鋼君はいつも部活だし、オレ帰宅部だもん」
ファイは即答した。嵐はそれ以上は言わなかったが、ファイは生徒会役員の仕事のことをすっかり忘れていたのである。


「草薙先生、三年生へのメッセージをお願いします」
ファイは色紙を草薙先生に渡すとマジックを取り出した。
「おぉ、ご苦労様」
ファイは一年生を担当している先生に三年生宛の色紙を書いてもらう様依頼する係だった。
一年生の先生と言っても堀鍔学園はクラスがたくさんある上教師の人数も多い。ファイと嵐が半数ずつ分担しても数日掛かりとなる見た目よりもずっと大変な仕事だった。
「最近楽しそうだが何か良い事があったのか?」
草薙先生にそう言われ、ファイは真っ赤になった。
そ、そんなに浮かれてたの、オレ・・・
「あの、別に、なんでもないです。えっと、よろしくお願いします!」
しどろもどろになったファイは草薙先生にマジックを押しつけ教官室を後にした。


「ふう、やっと終わったよ」
ファイが生徒会室に戻ってコーヒーを作っていると嵐も戻って来た。
「嵐もコーヒー飲む?」
「えぇ、うんと甘くして~」
「わかった。やっぱり疲れてる時は甘い方がいいよね」
ファイはカフェオレを作り砂糖をたっぷり入れると嵐に手渡した。
ガラッ
「あーあ、疲れた」
コキコキと首を鳴らしながら空太と黒鋼がやって来た。
「おっ、ファイちゃんおれにもコーヒーちょうだい」
「あ、うん」
「ちょっと空太、自分で淹れなさいよ」
「嵐、いいよ大丈夫。ちょうど淹れるところだったんだし、皆で飲んだ方が美味しいよ」
「そうだそうだ。ファイちゃん優しいなぁ」
「はい、どうぞ」
ファイは嵐と空太に続き黒鋼の前にカップを置いて言った。
「黒鋼君も・・・よかったらどうぞ」
「・・・」
黒鋼はまじまじとコーヒーカップを見つめていた。空太が見かねて言った。
「黒鋼、照れてないで何か言ったらどうだ?」
「あ、あぁ、サンキュー」
「どういたしまして」
ファイはそう言ってほほ笑み嵐の隣りに腰掛けた。
暫く四人はコーヒーを飲みながらおしゃべりしていたが、不意に嵐が立ち上がった。
「空太、そろそろ帰りましょう」
「うん、お二人さんじゃあまた明日」
「うんまたね・・・」
突然二人きりになり、沈黙が訪れた。居心地の悪い沈黙にファイも黒鋼もどうしたらよいかわからずそわそわしていた。
キーンコーンカーンコーン
「きゃっ」
チャイムの音にファイが本当に跳び上がって驚いた。
「あぁ、びっくりした!」
胸を抑えドキドキしているファイがなんだかおかしくて、黒鋼は思わず吹き出した。
「もう、笑う事ないでしょう?だってびっくりしたんだもん」
ぷうと頬を膨らませるファイに黒鋼は決まり悪そうに言った。
「悪い。本当に跳び上がって驚く奴を初めて見たから。それより俺達もそろそろ帰ろう」
「うん」
ファイは真っ赤になっていたが帰り支度を始めた。
そして何となく一緒に校門に向かったものの、二人とも何を話したら良いか分からず黙ったまま歩いていた。
校門を出たところにある前店で店主が掃除をしていた。何となく二人は足を止め、その様子を見ているとファイが言った。
「生徒会役員になる前は、よくここにレモンティを買いに来てたけど、最近来てなかったな」
「そ、そうなんだ・・・」
黒鋼はファイを待ち伏せしていた頃を思い出していた。毎日早く起きて朝練をサボってまでファイが通るのを待っていた。しかし結局声を掛ける事も出来ずにいたっけ。あの頃は見ているだけでいいと思っていたが、今思えば情けない事この上ない。
黒鋼は勇気を振り絞って口を開いた。
「あのさ」
「うん?」
ファイが綺麗な瞳で黒鋼を見つめた。
「チョコ、美味かった。ありがとう」
かあああっ
ファイは真っ赤になってもじもじと手の指を組んだ。
「あの、ありがとう、食べてくれて・・・」
蚊の鳴く様な声でそう言うのが精一杯だった。
「酒が入ってて美味かった」
ファイは少しだけ眼を見開いた。
「お酒好きなの?」
「まぁな。親父のをちょっとだけな」
悪戯っぽく笑った黒鋼の表情はとても生き生きとしていて、ファイも思わず連られて微笑んだ。
黒鋼は一瞬真顔に戻ると、ファイを優しく見詰めて言った。
「・・・この間の、返事訊いていいか」
「えっ」
思わぬ展開にファイは狼狽えていた。
「俺はこの学校に入った時から、ずっとお前が好きだった。お前は俺の事、どう・・・?」
黒鋼はそこまで言うのが精一杯だった。ファイを直視出来なくて眼を逸らした。
ファイは俯いた。
「・・・オレ・・・」
オレも、好き。
そう言いたいのに言葉が出ない。嵐が言ったとおり、自分の気持ちは黒鋼に伝わっていなかった。きちんと言葉で伝えなければ、想いは伝わらないのだ。
ファイは小さく深呼吸すると小さな声で言った。
「オレ・・・も・・・好き」
一瞬沈黙が流れた。ファイが当惑した瞬間、ファイは黒鋼の腕の中で抱き締められていた。
「く、苦しいよ・・・」
思わず苦情を言うと黒鋼はハッとして腕を緩めた。
「ごめん」
片手はそのままでそっとファイの頬に手を当てた。ファイがピクリと反応して顔を上げた。
「つきあって・・・くれるか?」
「うん・・・」
真っ赤な顔のまま恥ずかしそうに答えたファイに、黒鋼は嬉しそうに微笑むとファイの頬を両手で包んだ。
「好きだよ・・・」
「うん・・・」
初めての口づけは、なんだかチョコレートの味がした。



  END





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