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小説 鷹の口づけ


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堀鍔学園」
堀鍔学園(短編)

「さよなら」

2009.12.30  *Edit 

この日が来るのは分かっていた。初めて出会ったあの日から、彼はずっとファイしか見ていなかったことに、おれは気付いていた筈だ。


「ユウイ、本当に気持ちは変わらないの?」
ガランとしたユウイの部屋でファイは泣きべそをかいていた。ユウイは笑った。
「うん、元々次の仕事が決まるまでの契約だったし。中途半端な期間なのに雇ってくれた侑子先生に感謝してるよ」
「でも、別にシェフじゃなくてもいいじゃん。ずっと一緒にいようよ。離れたくないよ」
ユウイはファイのおでこをつついた。
「どの口がそんなこと言うのかな?そのセリフ、そっくりお返しするよ、ファイ」
「!」
ファイがユウイの止めるのも聞かず日本にやって来たことを言っているのだ。ファイは真っ赤になって俯いた。
「でも・・・。ユウイはイタリアに大好きな人を残して来た訳じゃないでしょ?」
ユウイは好きな人と言う言葉にピクリと肩を震わせたがファイは気付かなかったようだ。ファイは大きな声を出した。
「ね、だったら!」
「いい加減にしろ。男が自分で決断したことにケチ付けるんじゃねえ」
低く押し殺したような声を発したのは言うまでもなく黒鋼だ。しかしファイはまだ抗議していた。
「だってっ!明日なんて急すぎるよ!黒様だって寂しいでしょ?」
「ふん。黙って行かせてやれ」
ユウイは思わず微笑んだ。
「ありがとう、黒鋼。ファイ、黒鋼先生を困らせちゃダメだよ」
ユウイはまるで兄であるかのようにファイに言うと、ギュッと抱き締めた。ファイも抱き締め返す。暫くの間そのままでいるのを黒鋼は先刻と変わらず壁に凭れ腕を組んで見つめていた。
双子は肢体を離すと見つめ合い別れのキスをした。そしてファイが口を開いた。
「ユウイ」
「ん?」
「せめて出発を日曜日にするとかしてよ?」
ユウイは苦笑した。
「そしたら皆で見送る気でしょう?それがイヤだから平日にしたの」
「なんで?!しかも11時の飛行機なんでしょ?オレおもいっきり授業中なんだよ?オレにさえ見送らせてくれないの?」
ユウイは何も言わなかった。全てそのとおりなのだ。平日の、昼前。そして黒鋼とファイが一番授業が詰まっている日を、わざと選んだのだから。
見送りに来られたら泣いてしまうだろう。やっぱり帰りたくないと泣くだろう。
そして黒鋼を、連れて行こうとするだろう。
そんな浅ましい自分を、ユウイは誰にも見せたくなかった。
「もうチケットを取っちゃったし、諦めて、ね?」
「でも・・・」
まだ何か言おうとするファイを遮って、ユウイは言った。
「生きていればいつか会える。ね、夏休みに遊びにおいでよ」
「うん。必ず行くよ。ね、黒様?」
「そうだな。お前の貯金があればな」
「貯めるもん!」
ファイは浪費家でなかなか貯金が増えない。反対にユウイは堅実に貯金するタイプ。それを知った黒鋼は言ったものだ。
「お前ら、本当に『同じだけど違う』んだな」
と。


ファイは泣き疲れたのかくうくうと寝息を立てて眠っていた。せめて朝まで二人一緒に過ごしたい、とねだったのはファイだったのに、先に眠りに落ちてしまった双子の兄をユウイは愛しそうに見つめていた。
トントン
真夜中だと言うのにノックの音がした。
誰とも約束などしていなかったが、ユウイはそれが誰だか知っていた。だから黙って待っていた。
「いいか」
「どうぞ」
鍵のかかっていないドアを開けて黒鋼が入って来た。黒鋼は言った。
「やっぱり起きてたんだな」
「やっぱり来たね」
二人は同時にほほ笑んだ。黒鋼はファイが眠っているのを見ると言った。
「やっぱりな」
苦笑いするとユウイに向き直り、そっと抱き寄せた。
「決めたんだな」
「うん」
「そうか」
二人は空が白み始める頃まで、ただただ抱き合っていた。
そして、ついに黒鋼が言った。
「そろそろ部屋にもどらねぇとな」
「うん」
黒鋼は玄関へと歩き出した。
「!」
黒鋼はドアの前で歩みを止めた。
ユウイが、黒鋼の背中に抱き付いていた。
黒鋼はユウイの腕に自分の手を添え、そして言った。
「きっと貯金はたまらない。お前が逢いたくなったら、来ればいい」
「うん」
「じゃあな」
「さよなら」
二人の手が離れた。
バタンと音を立ててドアが閉まった。



END




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