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小説 鷹の口づけ


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本誌沿い

2009.12.30  *Edit 

「泣くかと思った。サクラちゃんは小狼君の本当に大切な人みたいだから・・・今は・・・泣いているのかな・・?」
「さぁな。けど泣きたくなきゃ強くなるしかねぇ。なにがあっても泣かずにすむようにな」
「うん・・・でも、泣きたい時に泣ける強さもあると思うよ」
激しく降り続く雨の中、一頭一匹一羽の巧断が小狼に寄り添っていた。
「泣きたいのか」
不意に黒鋼が言った。
「え・・・」
オレは窓の外に向けていた視線を黒鋼に向けた。
この男は、敵。
邪魔する者は全て殺せとあの男は言った。
ぶっきらぼうで優しい、何も知らないこの男に不意にかけられた言葉は、一瞬オレの思考を停止させた。
「お前も泣きたいのか」
重ねて問われ、やっとオレは言葉を紡ぎ出した。
「そんな事ないよ。どうして?」
「別に。そう見えただけだ」
不機嫌そうに彼はそう言って、オレに向けていた紅い瞳を再び窓の外に向けた。


見かけと違って、優しい人。それは出会って間もなくとも、彼の巧断が小狼に寄り添っていることで判る。
いつかこの優しい人を、オレは殺さなければならないのだろうか。
オレは唇を噛んだ。


不意に黒鋼に顎を掴まれ、オレは眼を見開いた。
「な、何?黒ぽん?」
驚いてその手を掴むと、黒鋼は言った。
「泣きたいんだろう?」
「そんな事ないってば!」
思わず子供のように大声を出したオレは黒鋼から逃れようと身を捩った。
黒鋼は意外にもあっさりと手を放した。部屋を出て行こうと歩き出した時、不意に後ろから抱きすくめられた。
「泣けよ。泣きたい時に泣けるのが、お前の強さなんだろう?」
泣きたくなんてないのになぜか涙が零れた。次から次へと止まらない。
今まで生きて来た永い永い時間の中に閉じ込めてきた全ての涙が溢れたのかと思う程、次から次へと溢れ出ていつまでも止まらなかった。


オレは声を上げて泣いた記憶がない。
いつも二人で肩を寄せ合い慰め合いながら瞳の端に涙を浮かべる事はあったけれど、声を出して泣くなんて出来なかった。
塔の上と下に分けられてからは言わずもがな。
恐ろしくて、会いたくて、それしか考えられなくて。
涙が体の中にあるなんて忘れていた。きっと自分で堅い堅い殻にしまってしまったのだろう。
だから恐ろしい呪いをかけられても怖くはなかったし、涙を浮かべる事も無かったのだ。

それなのに。
彼はたった一つ。ただオレを抱き締めるだけでその殻を壊したのだった。
「泣きたきゃ、泣けばいいんだ」
黒鋼はそう言ってオレの涙を拭うと、そっとオレの頬に触れ、優しく口づけた。
オレは黒鋼の胸に顔を埋めて泣いた。
胸が張り裂けそうだった。



「お前の願いを邪魔するならば、殺せ」



きっとオレは殺せない。




 セレスを踏まえての、阪神共和国のお話でした。





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