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小説 鷹の口づけ


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堀鍔学園」
堀鍔学園(短編)

洗濯物

2009.12.07  *Edit 

「今日は風が強いな・・・」
黒鋼は、短い髪が風で流されるのを感じながら洗濯物を取り込んでいた。
「ん?」
ベランダの端に下穿きが引っ掛かっている。
「なんだこりゃ?女物か?」
よく見ると前開きになっているから男物のようだ。この職員宿舎の誰かだろうか。ふと黒鋼は、
まさかファイじゃぁないだろうなと、隣のベランダへと声を掛けた。
「おい。いるか?」
しかし返事は無い。部屋には居ないようだ。黒鋼は首を捻りながら自分の洗濯物の中にそれを放り込んだ。


その頃ファイは外で風に飛んだ下着を探していた。
「どうしよう・・・。どこにもないよ・・・」
実は先日、ファイは下着泥棒にあっていた。その日は女性職員も被害にあっていたのだが、勿論男性で被害にあったのはファイだけで、ファイはかなり落ち込んでいたのだった。
だからこの強風で飛ばされないようにしっかりと止めていたにもかかわらず、取り込もうとした瞬間突風が吹き、後へと飛ばされてしまった。
そして結局下着は見つからず、ファイは諦めて家に戻ったのだった。


その夜黒鋼とファイの二人は、例によって夕飯を一緒に食べていた。いつもはよく喋るファイが今日は気味が悪いほど静かだ。
「どうした?何かあったのか?」
訳を尋ねると、ファイは恥ずかしそうに答えた。
「実は・・下着を風で飛ばしちゃって・・・」
「下着?」
「うん、オレ前にも盗まれたことがあるからさ・・・。オレ女じゃないのにね」
ファイはかなり落ち込んでいるようだった。黒鋼は、下着と聞いて何か引っ掛かるものがあったが、誰かの下着を拾った事はすっかり忘れていた。だから黒鋼は言った。
「じゃぁ明日一緒に探してやるよ」
「うん、黒たんありがとう。薄いブルーグレーのボクサーパンツでね・・・・」
しかしファイの説明を聞きつつ慰めるうちに、黒鋼は拾った下着のことを思い出した。
しかし今更言い出すことも出来なかった。


黒鋼が拾った下着のことを言い出せないまま何日か過ぎてしまったある日、ファイが黒鋼の部屋の片付けを手伝っていると、なんと黒鋼の部屋から自分の下着が出て来た。
「黒たん、何これー!」
ファイは黒鋼に詰め寄った。
「あっ」
黒鋼は下着のことなどすっかり忘れていたのだ。
「黒たん、これオレのなんだけどっ!これどうしたの?まさか黒たんが盗ったの? この前の下着泥棒もそうだったならオレ黒たんと別れるからっ」
矢継ぎ早のファイの言葉に黒鋼は途中で口を挟む事さえ出来ずにいた。やっとファイが口を閉じ、黒鋼はやっと事情を説明し始めた。
「風が強かった日にうちのベランダに引っ掛かってたんだ」
「本当?」
ファイは明らかに疑っている。黒鋼はムッとして言った。
「本当だ。大体なんで俺が男の下着なんか盗らなきゃいけないんだ!」
「男の下着なんか、って何? オレのだって知ってて盗ったんでしょ? 黒様サイテー!」
バシッ
ファイは平手をかまし、出て行ってしまった。
黒鋼はファイに平手打ちを食らうという、あまりの出来事に呆然としていた。
「なんで俺が殴られなきゃいけないんだ」
しかし、下着を拾ったことを二度も忘れていたというのは黒鋼の落ち度である。どうしたものかと、黒鋼は頭を振った。
次の日から、ファイは黒鋼と口をきかなかった。朝の打ち合わせで隣の席に座っても、つーんと反対を向いている。
「まいった・・・」
学食のテーブルにトレーと新聞を置きながら、黒鋼は呟いた。ファイは本気で怒っているようで、あれ以来まともに話していない。当然お弁当を作って貰えるわけもなく、こうして一人学生食堂で昼食を取っているのだった。
しかも、学園中に二人の喧嘩は知れ渡り、何処へ行っても
「先生、何をしたのか知りませんけど、さっさと謝っちゃった方がいいですよ」(四月一日)
とか、
「早く仲直りした方がいいですよ、本当はファイ先生だって黒鋼先生のこと大好きなんですから」(さくら)
とか、
「あんなにファイ先生を怒らせるなんて、黒鋼先生、激しくしすぎたんじゃな~い? ちょっとヘンタイなことしちゃったの?」(勿論侑子)
等と言われるのだ。やってられるものではない。
「かといって、今更謝るのもなぁ・・・」
さして美味しくない学食を口に運びながら、独り言を呟いた。謝れば仲直りできるだろうが、盗んだことを認める事になるような気がして嫌だった。
「ん?」
黒鋼が目を止めたのは、「インターネットでギフト」という広告だった。


それから二日後のこと。
ピンポーン
チャイムの音に覗き穴から外を見ると、宅配業者が立っていた。ファイは鍵とチェーンを外すと(黒鋼は合い鍵を持っているためチェーンを掛けていたのだ)荷物を受け取り、印を押した。
部屋に戻り差出人を確認すると、なんと「本人」とある。しかしファイは荷物を送った覚えはない。首をひねりながら宛名を確かめると、確かに自分の名前が印字されている。
「何だろう? やだなー、爆弾とか入っていたりして・・・」
やむを得ずおそるおそる封を開けると、中箱がラッピングしてあり、一番上にカードが入っていた。
「悪かった。でも泥棒は俺じゃねぇ」
名前はなくとも、大きく乱暴に書かれたその文字にファイは思わず胸が詰まった。
「そんなの知ってるよ・・・」
目の端を片手で押さえ、呟いた。
「バカなんだから・・・」
カードの下にはボクサーパンツが数枚入っていた。ウェッジウッドのカップに有りそうな柄やクラーベアクセサリーが描かれたものもある。意外なデザインにファイは思わず呟いた。
「黒様趣味いいかも・・・」
ファイは携帯電話を手に取ると、いつもの番号に電話した。
「はい」
「あの、オレ・・・」


ある日の二人の部屋のベランダには、おそろいの下着がそれぞれ干されていた。



   END





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