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小説 鷹の口づけ


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本誌沿い(長編)」
時間

時間 その8

2009.11.17  *Edit 

「あのヤロウ、まだ生きていやがったのか?」
黒鋼は今にも奥義を繰り出しそうな勢いで憤慨していた。しかしファイは首をひねった。
「んー。そういう訳じゃないと思うよ。だってこれ大分古い型だし。黒様が真っ二つにしちゃったから再現することは出来なくなっちゃったけど、きっとこれ、大分前からここにあって少しずつ魔物を作り出していたんだと思うよ~」
「ああっん?俺がこれを真っ二つにしなかったらお前は死んでいたかも知れないんだぞっ!」
黒鋼の殺気を含んだ怒声にファイは思わず耳をふさいだ。耳に手を当てたまま口を開く。
「そうじゃなくてぇ。オレ思うんだけど、黒様のお父上ってそれまで見たこともない魔物と戦ったんでしょう?」
不意に「父上」という言葉が出てきて驚いた黒鋼の殺気は消え、黒鋼は不機嫌に黙り込んだ。何の関係があるというのか。
「オレ思うんだけど、これはオレの推測なんだけどさ、この飛王が作った装置から生まれた新しい魔物なんじゃないかな、その魔物って」
ファイは恐る恐る耳に当てた手を離しながら言った。
「・・・じゃぁ、親父もアイツに殺されたようなものだって言うのか」
「うん・・・。ここから諏訪の領地まで二十里くらいだし、多分、ね。それに魔女さんも言っていたでしょう?『知世姫に仕え、いつか旅立つようにするために諏訪を滅ぼした』って・・・」
黒鋼は俯いた。確かに魔女はそう言っていた。黒鋼の眉間の皺が更に深まる。
ファイはそんな黒鋼にちょっと困った表情をしたが続けて話し始めた。
「だからねー。この辺一帯にたくさんの魔物が居たように見せかけたのは、この機械が作動したまま壊れかけてたせいじゃないかと思うんだ。これ、すごい魔力を帯びてたみたいだもん。あ、魔力って、放出した後に気配が残るんだけど、放出された魔力が大きければ大きいほどその残った気配も大きくて・・・」
ファイのうんちくはまだまだ続きそうだった。しかし黒鋼はファイが長々とうんちくを話し続けているのは、黒鋼が黙っていられるようにという配慮だということがよく分かった。
情けない。
黒鋼は大きく息を吐くと、ファイの話を遮った。
「おい、要するに、飛王の奴が残したこの機械のせいで新種の魔物が現れたんだろ?」
「ピンポーン♪、ご名答~」
にっこりとファイは微笑んで、黒鋼の腕をとった。
「じゃ、原因も分かったし帰ろっか。忍びの皆さんにあの機械を運んでもらお。証拠品だから念のため調べないとね」
「あぁ。その前に、たたき壊すってのはどうだ?」
ファイは瞳を見開いた。
「もうっ、それじゃ証拠の意味無いでしょー。せめて姫と帝に見せてからっ!」
「ちぇっ、それじゃぁ欲求不満だ」
口を尖らせる黒鋼にファイは悪戯けて言った。
「ガマンしろ!」
不意に黒鋼がファイを抱き締めた。そしてファイの肩に顔を埋めるようにしたままで言った。
「ありがとう。だが結局お前に魔力を使わせちまったな。礼と詫びは今夜カラダでするからな。覚悟しろよ」
「えっ、えっ、それって・・・そういう意味~?!」
ファイが黒鋼の真意に気付いて文句を言おうとした時、控えていた忍達の視線が全て二人に集まっていることにやっと気がついた。二人はまだ抱き合っている。
「・・・!!」
ファイは真っ赤になり慌てて離れようとしたが、黒鋼は更に強く抱き締めた。
「くろさ・・・」
ファイの言葉は黒鋼の唇によりふさがれた。そして、辺りから深い溜息が零れたのだった。


忍軍は飛王の置きみやげとでも言うべき魔法制御装置を運び、白鷺城へと帰って行った。白鷺城にて可能な限りの分析が行われることになっている。
ファイは魔力を使い果たしたせいで忍軍と共に行けないことが分かった。そこで黒鋼は伝令を通じて知世姫に半月ほどの休暇を願い出た。そして戦場となったその地から二十里ほど離れた、諏訪の国へとファイを案内した。
あれから十余年が経っているにもかかわらず、戦の跡は未だに消えていなかった。しかしちらほらと戻ってきた民が小さな集落を作り始めていて黒鋼は嬉しかった。そしてそんな黒鋼を見て、ファイもまた嬉しかった。


自然に囲まれた諏訪の国での日々はあっという間だった。
「やっぱり黒様と一緒だとあっという間に時間が経っちゃうよ」
ファイはぽつりと呟いた。それを聞きとがめた黒鋼は笑って言った。
「当たり前のこと何言ってんだ」
「どうして?」
「楽しい時間、嬉しい時間はすぐ過ぎるように感じるもんだ。そしてそれは幸せだからだ。違うか?お前がすぐ過ぎるように感じたことは嫌なことだったか?」
「あ・・・」
ファイはぷるぷると首を振った。気が付けばすぐに過ぎてしまう時間は、全て自分にとってかけがえのない一番大切な時間だった。
「そっか・・・。黒様もあっという間だった?」
「まぁな」
ほんの少し照れくさそうに言った黒鋼に、ファイはとても嬉しくなった。


出立の朝、たくさんの民が見送ってくれた。黒鋼が戻っていると聞いてわざわざ黒鋼の顔を見るために戻ってきた者もあった。
「若様、お元気そうで何よりです」
「いつこちらに正式に戻られるのですか」
などと口々に言ってくれる諏訪の民を見て、例え何がき契機(きっかけ)でも、諏訪に戻り諏訪を愛してくれたらそれでよいと黒鋼は思った。中には
「早くお式を挙げて我々を安心させて下さい」
と言う者も居て、これには二人とも参ってしまった。ファイが男だと知らない者はかなり居たようで、黒鋼は閉口した。
逆にファイは面白がって、黒鋼から貰った蒼い指輪を見せびらかし、黒鋼に首根っこを引っ張られ退場させられたのだった。


馬に乗って白鷺城へ向かう道中、ファイは言った。
「それにしても、不思議な魔物達だったね・・・」
「あん?」
「んー。だって、結局は小狼君のように写し身だったわけでもないし。飛王は、再生する能力をどうしたかったのかなって」
「あぁ」
黒鋼は黙り込んだ。暫く二人はそのまま黙って馬を歩かせていたが、黒鋼が口を開いた。
「思うんだが、再生する能力ではなくて『時を戻す能力』じゃねぇかな」
「時を戻す?」
ファイは驚いた。
「あぁ、戦いの様子から感じたのは、再生していると言うより『時間が戻っている』という印象だった」
「ふうん・・・」
「ピッフル国のマガニャンは自動で絵が動いて喋っていただろう?あるスイッチを押すと逆に動いて戻っていくんだが、それと似た感じを受けた」
ファイはぽんっと手を叩いた。
「あぁ、黒様が気に入ってた忍者の漫画だよね~。どの次元に行っても何故か続きが読めるっていう」
黒鋼は顔を顰めた。漫画の最終回を読めなかったことを思い出したらしい。
「続きのことはどうでもいい。飛王は愛する人を生き返らせたかったんだろう?時を戻せばもしや、と考えてあの仕掛けを作ったのかもしれねぇ、と思ってな」
「なるほど・・・・。時間を本当に戻すには、とても強大な魔力がいる。装置を作ることが出来ても、維持するほどの魔力は飛王にはなかったのかもね」
「多分だがな」
ファイは黙ってしまったが、黒鋼はファイが何を考えているかよく分かった。もしもあの時、ファイに時を戻すほどに強大な魔力があったなら、きっとユウイを生き返らせようとしたはずだ。そしてそれが叶っていれば、飛王に利用されることもなかった。そして、自分と出会うことも・・・。
「全ては必然か。くそっ」
「えっ、なぁに?」
ぱっとファイが黒鋼を仰ぎ見た。
「なんでもねぇ」
「だって、なんか言ったよぉ」
「ボケッとすんなって言ったんだ」
「黒様ひどぉい!」
再び平和になった諏訪の森に、二人の賑やかな笑い声が響いた。





エピローグ

白鷺城に到着した二人は、知世姫がよれよれに疲れているのを見て驚いた。
「どうしたんです、まさかこちらに結界を破ろうとする魔物が・・・?!」
「いいえ、違います。姫は寝不足なのです」
溜息と共に蘇摩と植田が現れた。もう蘇摩の体は大分良いようだ。
「寝不足?」
黒鋼は嫌な予感がした。知世姫が任(やくめ)を顧みず寝不足になるほどやることと言えば限られている。
「蘇摩さん!寝不足になるほど、大変なことがあったのですか?」
蘇摩はそれに答えず、知世姫が口を開いた。
「ファイ」
その口調に、ファイはギクリとした。嫌な予感が背後からひしひしと迫ってくる。
「わたくしの言いつけを守りませんでしたわね。明後日は満月です。定例の月の祭事があります。この一月の間寝る間を惜しんであなたのために作った振袖を、約束どおり全て宴で披露していただきますわよ。嫌とは言わせません。御覚悟なさいませ」
知世姫はいつも以上の威厳と迫力で宣言した。
「や、やっぱり・・・」
ファイは両手を床についてがっくりとうなだれた。大きな溜息をついたのはもちろん黒鋼だ。


満月の晩、一刻毎に違う振袖を纏った青年が、月の光に黄金の髪を燦めかせながら舞を踊っていた。
(あーん、誰か助けてよぉ~)
日本国中に響き渡る筈の美しい悲鳴(こえ)は知世姫により消し去られ、人々はまるで妖精のようだとファイを褒め称えたのだった。





   END



銀鷹が語る 平成20年7月25日 掲載

後書きというより蛇足 (銀鷹が語る掲載時)


一応補足すると、飛王は野望を打ち砕かれただけでなく、死んでしまった(ように思われた)という設定です。死体を確認できないんだけど、あの状況では生きてはいまい、という感じ。ちなみに銀鷹の考えでは、飛王は始めから次元を渡る術を持っていないと思っています。 勿論自分は手を汚さずに手下に事を為させるタイプだろうとは思いますが、それ以前に自分の魔力では無理なので色々と策略を巡らせてると。そういう感じ。 ふと思ったのですが、飛王はいつも鏡を見ながら何か(ワイン?)を飲んでいますが、食事のシーンは出てきませんね。どうでもいいですが。


おわり



銀鷹が語る 平成20年7月25日 より


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