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小説 鷹の口づけ


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本誌沿い(長編)」
時間

時間 その6

2009.11.17  *Edit 

「勿論薬師は薬師だ。持ち場に戻れ」
黒鋼の言葉にファイは憤慨した。
「黒様、オレだって役に立ちたいんだよ!それに先刻あっちとこっちで魔法の感じがした。オレが居た方がいいと思う!」
ファイはそう言いながら魔力を感じた方を指差した。確かに自分は魔力を感じとる事は出来ないのだからファイが居た方がいいのかもしれない。黒鋼はくノ一に尋ねた。
「おまえはどうだ?感じたか?」
いいえ、とくノ一は首を横に振った。
黒鋼は小さく溜め息を吐き、やむを得ずファイも共に蘇摩を捜すことにした。


魔物の咆哮が辺りに響き、蘇摩は怪我を負ったまま、魔物からかろうじて逃れ隠れていた。三人は魔物の声を聞きつけ、蘇摩を見つけることが出来たのだった。蘇摩の出血量はかなり多そうだった。
「黒鋼、突然魔物が現れて・・」
「あぁわかってる」
黒鋼がそう言った時蘇摩は安心したようにすうっと眠るように気を失った。そしてファイが治療を、くノ一は増援を、黒鋼が魔物をそれぞれ担当して散らばった。
「地龍・陣円舞!」
黒鋼が魔物を牽制しその間にファイが意識を失った蘇摩を抱き抱え救護所へと向かう。
「閃竜・飛光撃!」
黒鋼が次々に技を繰り出しても魔物の傷は見る見る塞がってゆく。
「クソッ、弱点は何なんだっ」
忌々しそうに言葉を吐いても傷が塞がってゆくのを止められる訳ではない。黒鋼は大きく剣を振り上げ、もう何度目かも判らない程、何度も何度も魔物を真っ二つに切り裂いた。


蘇摩は目を覚ました。慌てて起き上がろうとして傷のあまりの痛さに顔をしかめた。それに気付いたファイが声を掛けた。
「あ、蘇摩さん気付いたね。大丈夫ですか?」
「何とか動く事だけは出来そうですが、すぐに戦闘に参加するのは無理そうですね・・・」
蘇摩の言葉にファイはくすりと笑うと言った。
「とにかく休んで下さい。何か伝えることがあったら先刻の伝令の子が控えて居ますからお願い出来ますから」
ファイはそう言って薬を蘇摩に手渡した。
「ありがとう。じゃぁ増援はどうしたのかしら?」
「今はまた弓矢部隊が良さそうだと現場に向かっています。でも、人手が足りないので蘇摩さんにいい案はないか聞いてこいって黒様が、あ、団長が」
ファイは言葉を切った。蘇摩は肩を震わせて笑っている。
「蘇摩さん!」
「ごめんなさい、あまりにも自然に言うから、黒様だって・・・」
ファイは真っ赤になって慌てて言った。
「とにかく!何か妙案はないですか?気付いたこととか、何でもいいから情報をくれと言うことです!もう一方の出現場所が手薄なんですからっ!」
蘇摩はひとしきり笑うと、真面目な面持ちになり口を開いた。
「魔物の再生は、時間が経てば経つほど速くなっています。そして、急に魔物が現れた時、周りの景色が歪んだような感じがしました。あれが、魔法の感じなのかも知れません」
「あぁ、時空が歪んでる感じかな? そうだとしたら大がかりな装置か魔法なんだと思います。それっぽい何かに気付きませんでしたか?」
ファイの言葉に蘇摩は少しだけ考え込んだ。
「そうですね。二カ所から殺気が放たれたと言うことは、おそらく魔法が二か所で放たれているのでしょう。急に魔物が現れた事を考えると尚そう思います」
「なるほど。そう言えば魔物が消えちゃったんです。魔法で隠しているのか、本当にいないのか判らないのですが・・・」
「えっ、魔物ならいましたよ」
「蘇摩さんを襲った者ではなくて、同じような魔物が碁盤の目のように蹲って居たでしょう?それが居なくなったんです」
「そんなばかな・・・」
蘇摩は愕然とした。だってあの場所に行くまでの間に沢山の魔物が居たではないか。眠っているように蹲って。
「ではあれだけの広さに対して魔法がかけられているというの?」
「うーん、そこが解らないんですよね~。あれだけの数の魔物を隠すには、例え幻術だったとしても、魔法ならかなりの魔力がいる筈ですから」
ファイは珍しく眉間に皺を寄せた。


黒鋼の元に弓矢部隊が到着し応援を始めた。魔物はあちらこちらから発せられる矢の応酬にうざったそうに剣で払ったりしていたが、自分に一番ダメージを与えているだろう黒鋼に突進し、切り付けた。
そう。この魔物も剣を持っていた。蘇摩もこの剣に切り付けられたのだ。
しかし猪突猛進の魔物が黒鋼に敵う筈もない。黒鋼は魔物の剣を楽々避けると木に駆け登り魔物の頭上へと飛び上がった。
黒鋼は魔法の力によって魔物が消えたのではないかと考えていた。ファイが感じたという魔法の力は同時ではなく順番に代わる代わる発生していたという。この事から、黒鋼が対峙していた魔物が消え、蘇摩の元に現れたのではないかと考えたのだ。しかし今は魔物が此処にいるうちになんとかしなければならない。消えてしまったたくさんの魔物達が再び現れ今度は動き出す前に決着をつけなければ、と闘争本能が知らせていた。
「破魔・龍王陣!」
そして銀竜を振りかぶり切り付けようと構えた時、また、時空が歪んだ。


「!」
ファイは魔法の感じがして振り返った。蘇摩が不思議そうにファイを見つめた。
「どうしましたか?」
「あ、また魔法の感じが・・・」
ファイは蘇摩の方を向くこともせず上の空で答えた。
(やはり魔法か・・・)
と言うことは相手はかなりの使い手と言うことになる。しかも次元を渡る術を持つ者だろう。なぜならこの日本国にオレと同じ系統の魔法を使える者はいない筈だから。
魔法は黒鋼が居た方から感じられた。そしてファイが考え込んでいる間に反対方向からまた魔法の気配がした。
あちらを向き、こちらを向いては考え込むファイに、蘇摩は口を開いた。
「ここはわたしが診ていますから、ファイは黒鋼と連携して魔物退治に加わってください」
「えっ?でも・・・」
蘇摩はくすりと微笑むと言った。
「私も以前植田局長に副長にならないかと言われたことがあるのです。ちょうど黒鋼が入城した頃で、私も忍軍団長になったばかりでしたからお断りしましたけどね」
「へぇ・・・。でもオレは着せ替え人形は御免です!」
語気を荒げるファイに蘇摩は言った。
「隊長として副局長兼副軍団長に命令します。私の代わりとして直ちに黒鋼の手助けをするように!」
ファイは嬉しいような、困ったような複雑な表情をしていたが、蘇摩がにっこりと微笑んだのを見て、敬礼のポーズを取った。
「はい!行ってきます!」




   つづく




銀鷹が語る 平成20年7月4日 掲載



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